繊維学部_研究紹介2020
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教員紹介地球温暖化の原因として悪者のような二酸化炭素(CO2)ですが、二酸化炭素がなければ地球の温度はもっと低く、生物が生きることができません。また、二酸化炭素は植物による光合成により有機物へと変換され、材料として、そして、エネルギー源として利用されます。そう考えると、二酸化炭素は全ての生物の源であると同時に、環境を調整する重要な役割を担っていると言えます。この二酸化炭素を物理・化学・生物の知識・技術を使って分離したり変換し、そして、工学の力を使ってうまく全体を設計することにより、炭素資源循環による持続的社会の構築を目指しています。火力発電所からのCO2の分離回収技術として、多孔質膜による分離プロセスを研究しています。また、植物工場や乾燥地緑化など、環境をうまく制御し、植物の炭素固定を促進する技術の開発にも取り組んでいます。逆に、その植物(バイオマス)を材料やエネルギーとして有効利用するための技術の開発も行っています。これら個別の課題に取り組みつつも全体を見渡せる、そんな人材を生み出したいと思っています。化学工学の知識と技術は、産業としてのものづくりの現場では必要不可欠であり、化学工学出身者はプラントエンジニアリングを始め、多種多様な製造メーカーなど、多くの会社で必要とされています。活躍の場はとても広いです。高橋伸英教授東京大学で博士号を取得後、信州大学繊維学部助教、准教授を経て、2014年より現職。専門は化学工学、環境工学。研究コンセプトは「CO₂+水+土+太陽+知恵+技術→持続的社会」。研究から広がる未来卒業後の未来像CO2を有効利用し、環境問題を解決するためには、各要素技術とともにそれらをどう上手く組み合わせるか全体システムの設計が重要。ナノサイズの孔を有する中空糸膜を用いたCO2分離プロセスを研究・開発しています。バイオマス由来の固形燃料(上)、新規吸着剤(下)の研究・開発も行っています。化学・材料学科CO₂を上手く利用し、持続的な社会の構築を目指す石炭と同程度のエネルギーを有する固形燃料コーヒー滓由来の粘土複合炭化物教員紹介西井研究室では、生命や生物現象に有機化学をメスとして切り込みます。例えば、抗ウィルス作用や血小板凝血抑制作用のある天然物(天然から単離された物質)を全合成しました。全合成とは、天然と全く同じものをフラスコの中で合成することです。また、新しい有機反応を開発することで、今までに合成困難とされていた物質の合成を可能にします。他に抗菌・殺菌剤やフェロモンなどの生理活性物質の合成を行っています。最近、魚類のフェロモンの分子構造と活性相関を解明する研究を開始しました。魚類の生物応答の謎の解明とともに、フェロモントラップによる特定外来種の駆除にも役立ちます。有機化学的手段を武器として自然に切り込んで、有機化合物に着目することは、分子レベルで現象を解明することにつながります。医薬の薬理活性、殺菌作用、フェロモンによる雌雄の応答、各種ホルモンによる生理現象などを分子レベルで解明すれば、その応用が未来を切り開きます。つまり、天然物にヒントを得た医薬の開発、不治の病の治療薬の開発、作物の病の治療、フェロモンを利用した有害生物の捕獲、フェロモンを利用する貴重な生物のコントロールなど夢が無限に広がることでしょう。主に製薬や化学メーカーへの就職が多い。有機化合物の単離手法や有機合成的手法は「ものをつくる」最強の力になります。これらを習得した卒業生は、社会の幅広い研究分野で活躍しています。西井良典教授ピッツバーグ大学博士研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員を経て、2018年より現職。主な研究分野は、天然物有機化学、有機合成化学、有機反応。抗ウィルス、抗HIV作用や血小板凝血抑制作用を有するいくつかの天然物の全合成を達成しました研究から広がる未来卒業後の未来像OOOMeOMeOOOOOMeOMeOOMeOリンゴ斑点病に対する農業用殺菌剤の開発研究を行った魚類フェロモンの探索、分子構造の解明、構造活性相関の研究化学・材料学科有機化学を駆使して謎を解く。生物活性物質の探索!新反応と新薬開発!34

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