繊維学部_研究紹介2020
31/66

教員紹介丈夫で長持ちする材料が必ずしも良いとは限りません。使用後に無害な物質となる分解性材料が注目されています。その代表選手が『生分解性プラスチック』です。しかし、微生物の助けが必要なため分解に長時間かかり、また分解した物の回収・再利用も難しいのが現状です。必要な時に必要なだけ分解し、分解物も簡単にリサイクルできれば、環境に優しいだけでなく機能性材料としてその用途は大きく広がります。伊藤研究室では、界面活性剤やプラスチックなど身近な有機材料に『化学分解性』を付与することを研究中。伊藤研究室では、光照射や酸・アルカリの添加ですばやく分解・分離回収できる有機材料を開発中。界面活性剤やポリマーは、身近にある製品(洗剤、プラスチックなど)としてだけでなく製造過程や廃棄物の処理工程など広範囲に使用されているので、分解性を付与できれば、多くの分野で品質向上、工程の効率化、安全、環境保全などが期待される高機能エコマテリアルとして活躍するでしょう。塗料や接着剤、繊維、樹脂などポリマーを扱う化学メーカーや薬品会社に就職する学生が多いのが特徴。研究室における有機材料の合成から評価までの幅広い経験を生かして、有機材料メーカーの研究開発職などでがんばっています。伊藤恵啓教授信州大学繊維学部助手、助教授等を経て、2009年より現職。研究分野は高分子合成化学、光化学、有機材料化学。アルカリ加水分解性の界面活性剤(洗剤)溶液に弱アルカリを少量加えると直ぐに泡が消えて固体(分解物)が析出する加水分解性界面活性剤を含む高分子微粒子(ラテックス)を用いると、速乾性などの高機能性の水溶性塗料や水溶性顔料インクができる研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科環境に優しい機能性材料の開発~必要な時に分解・回収~6 m60 m繊維表面への塗料の塗布(電子顕微鏡写真)紙表面への塗料の塗布(電子顕微鏡写真)紙表面への顔料インクの塗布教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科光触媒反応システムの開発クリーンな有機反応から人工光合成へ光エネルギーを駆動力として、光化学合成や水質浄化のための光触媒と反応装置を研究しています。目的反応に適した光触媒/助触媒の探索のため、Langmuir-Blodgett膜(LB膜)製造装置を用いてナノ階層構造を制御し、分子間力顕微鏡や導波路分光装置などで評価します。開発した光触媒を大量合成反応に応用するため、光触媒への導光性と原料の輸送効率を高めた光化学反応器を開発しました。この光化学反応システムをベンゼン等の部分酸化反応、太陽光を利用する水質浄化、光触媒消臭ウエアに応用し、さらに、水とCO2から化学原料を合成する人工光合成システムへの展開を検討しています。研究を通して、化学の知識を問題解決に生かす力、必要に応じて新領域を学び続ける力を身に着けるので、卒業生は、化学、電子や機械など広い分野で活躍しています。宇佐美久尚教授1992年に信州大学助手着任、助教授、准教授を経て、2012年より現職。研究分野は光化学、光触媒光触媒反抗器。水の浄化システムは植物工場にも応用。LB膜の製造過程と導波路分光装置ナノ構造を制御した光触媒を試作し、分光装置で評価する。光化学の原理に基づいて、新しい反応の仕組みを設計し、実際に効果を実験で確かめることが研究の醍醐味です。光触媒のナノ構造を最適化して活性を高め、大量合成に適した反応器と組み合わせれば、水と二酸化炭素から化学原料や燃料を合成する未来技術にも貢献できると考えています。多孔質ガラスを導光路とする光触媒反応器。反応器内壁に担持した光触媒で有害物質を分解する。レタス栽培用の浄水システムへの応用を検討している光触媒反応器。処理液原液ガラス側壁光触媒層網目状の導光路とマイクロ流路励起光LED太陽光LB膜の製造過程導波路分光装置30

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る