繊維学部_研究紹介2020
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教員紹介生体を機械部品として、直接的に人工システムに取り込むことで、従来の機械システムとは異なる新しい技術の創出を目指しています。例えば、筋肉は、生物が40億年の進化の末に獲得した大変優れたアクチュエータ(駆動源)です。そこで、モーターの代わりにこの筋肉を取り込むことで、電気や化石燃料を必要としないだけでなく、生体の持つ自己組織化・自己修復機能を備えたバイオハイブリッドロボットの創成を目指します。また一方で、細胞を磁場によって操作する技術を確立し、細胞から移植可能な生体組織を組み上げるシステムの開発も行っています。現代社会は化石エネルギーに依存していますが、それらの可採年数は150年程度と言われています。筋肉で駆動するロボットが出来れば、エネルギー問題を解決することができます。また、各組織の細胞へと分化することが出来るiPS細胞が注目を集めています。これらの細胞を用いて移植可能な三次元組織を構築することが出来れば、再生医療の発展に大きく貢献できます。2014年4月始動の研究室のため、卒業生はまだ出ていませんが、前職での卒業生は、生物が分かる機械屋として医療機器メーカー、微細加工技術を活かして精密機器メーカー等に就職しています。秋山佳丈准教授東京農工大学大学院を修了後、日本電子株式会社、東京農工大学生物システム応用科学府特任助教、大阪大学工学研究科講師を経て、2014年より現職。専門分野は、生物工学、微細加工、再生医療とそれらの融合領域。研究から広がる未来卒業後の未来像サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm生体の筋肉によって動くデバイスの例(左)自律歩行するマイクロロボット、(右)大気中で動くマイクロピンセット磁場によって細胞から組織を組み上げるイメージ(左)とそのためのシステム概要(右)機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコースバイオハイブリッドによる新技術創出マイクロロボットから再生医療まで教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース細胞の状態を“測り”生体に与える影響を“推し量る”柔道、サッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツにおいて脳震盪を繰り返すと記憶力や注意力の低下を引き起こします。頭を何度もぶつけることで、脳は刺激に対して脆弱、敏感になり、損傷閾値が低下します。一般的に頭部を強打すると、急激な加減速により脳組織に慣性力が働き変形します。脳組織の変形は神経細胞間の情報伝達を担う神経軸索に引張応力を与え、損傷や断裂を引き起こします。繰り返し脳震盪における軸索損傷の重症化メカニズムを明らかにするため、脳神経細胞の衝撃負荷実験を通して神経軸索の耐性値を開発しています。論理的思考力、課題解決力、コミュニケーション力などを自律的な研究を通じて養ってもらいたい。また、大学で培った人脈は卒業生にとっても在学生にとっても貴重です。研究生活の中で、同期との繋がり、先輩・後輩との繋がりを強めて欲しい。中楯浩康准教授慶應義塾大学大学院で博士(工学)を取得後、国立循環器病センター研究所生体工学部特任研究員、首都大学東京システムデザイン学部助教を経て、2018年より現職。頭部外傷研究、バイオメカニクス研究に従事。頭部衝突時の脳組織変形を実験的に再現するための細胞引張装置サイズW3cm×H2.65cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm外傷を受けた脳神経細胞や脳毛細血管の状態がどのような挙動を示すかを正確に知る(測る)ことで、CTやMRIなどの画像診断では特定が難しい脳神経損傷をコンピュータシミュレーションで予測する(推し量る)ことが可能になり、新たな診断システムや自動車などの安全基準の確立に繋がります。また、細胞を損傷させるだけではなく、活性化させる刺激を見つけることで、再生医療への応用も期待できます。通常培養では無秩序な方向に伸長する神経軸索(左)培養面の接着性を制御し一方向に伸長させた神経軸索(右)26

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