繊維学部_研究紹介2020
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教員紹介現在、限りある資源である石油から作られる合成高分子は、人間生活に欠かせない物質となっていますが、焼却や廃棄による環境汚染など多くの問題を抱えています。そこで、地球環境と人間社会の共存・共栄のために、再生可能で生物由来の有機物資源から得られる環境循環型高分子の開発が進められています。田中研究室では、再生可能資源である糖や植物油などを原料とした『バイオマスプラスチック』、環境中の微生物の作用により分解される『生分解性プラスチック』を用いて、『人間』と『環境』に対して無害で安全に使用できる材料開発に取り組んでいます。田中研究室では、人間の体内でも分解するような物質やバイオマスから作製した様々な材料を使って、生体(人間)に対して適合性を持つ医療用材料(縫合材料、細胞を増殖させるシート、創傷保護材)、健康・介護用品(化粧品用パックシート、フィルター)などの開発を目指しています。さらに海水を淡水に変えるシート、乾燥地用緑化シートなどの開発から、資源やゴミ問題などの環境問題の解決に役立つ材料開発を目指しています。卒業生の進路は多岐に渡っており、材料開発を行っている素材・製造メーカーだけでなく、繊維メーカーを中心に様々な業種に就職しています。社会的に関心が高い研究分野であることから様々な業界へ進む可能性が広がっています。田中稔久教授科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業や独立行政法人理化学研究所の博士研究員を経て、2020年より現職。研究分野は天然・水溶性・生分解性高分子などの材料物性・構造解析など。無数のミクロポアを有する生分解性高分子の高強度繊維を作製し、水溶性高分子を添加することで複合繊維材料を開発している乾燥地用緑化のために種子が発芽し成長するような水溶性高分子ゲルシートを作製し、その微細構造を電子顕微鏡を用いて解析する研究から広がる未来卒業後の未来像先進繊維・感性工学科感性工学コース『人間』と『環境』に無害で安全に使用可能な材料開発を目指して!教員紹介毎日授業中に座る椅子、毎日履いているシューズ。普段何となく、この椅子は座りやすい、このシューズは履きやすい、など色々なことを感じていると思います。では、どの程度心地良いのでしょうか?私たちは目に見えない心地を可視化し、心地を科学しています。脳波・心電図・筋電図といった生理的活動の計測や、行動・気持ちの変化の測定だけでなく、さらにはコンピュータシミュレーションも取り入れながら心地や感性を理解することによって、人間が良いと感じるモノを創っていこうとしています。コンピュータシミュレーションは身体内部の状態を解析でき、人間の感覚を推定できる方法です。このシミュレーションの一番の利点は身体内部の状態を可視化できることです。例えば、身長や足長などの身体情報を入力すれば、座席シートやシューズがその人に合っているかどうか、その場で表示できます。将来的には、コンピュータ上で、座り心地・履き心地・寝心地・触り心地などを評価したいと思っています。感性工学コースの学生は、ものづくりに対する意欲が強いので、自動車や鉄道関連などの製造業に進む卒業生が多いです。さらに、「感性工学」という他にはない観点で、ものごとを見つめることができるのが大きな強みだと感じています。吉田宏昭教授デジタルヒューマン研究センター研究員、信州大学繊維学部助教等を経て、2019年より現職。研究分野は、感性工学、バイオメカニクスなど。コンピュータシミュレーションを用いた心地評価などを行っている。座席に着座したときの気持ちの変化をアンケートを用いて調べ、その変化が身体内部でどのように現れているのか解析しています写真サイズ高さ4.35cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm歩行動作をビデオなどで撮影し、その動きをコンピュータシミュレーションで再現して、身体内部の現象を解明しています写真サイズ高さ2.65cm×幅3cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm研究から広がる未来卒業後の未来像先進繊維・感性工学科感性工学コース感性とシミュレーションの融合それは、新たなモノづくりの形15

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