繊維学部_研究紹介2020
10/66

教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース木村研究室のキーワードは「生活環境と繊維の研究」です。生活環境を彩るインテリア繊維製品の機能性や衣服や作業服の安全性に関する研究に取り組んでいます。例えば、室内に舞い上がる塵埃(ハウスダスト)の量と質が床材の種類によってどのように変化するのかあるいは作業服の静電気的安全性の確認はどうすればよいのかなどの研究を進めています。さらに、インテリア繊維製品の特性を正しく把握するための試験方法や評価方法に関する研究も推進し、これまでにJISの制定を行ったり、新しい試験方法をISO(国際標準化機構)に提案するなどの活動を行ってきました。私たちが生活をする上で必要不可欠な繊維集合体や繊維製品に注目し、楽しく、全力で研究を進めています。木村研究室では、学生の自主性を尊重し、実験・研究についても自ら考え、提案する姿勢を重視しています。自らが取り組むことで本当の知識や実力が身につくと考えるからです。卒業生は、繊維メーカー、試験検査機関、公務など多くの分野へ進出し、活躍しています。木村裕和教授大阪府立産業技術総合研究所から2013年に信州大学繊維学部教授に就任。主な研究分野はインテリア製品の機能性・安全性・快適性評価、繊維・高分子物質の静電気帯電性、繊維製床敷物の工業標準化。安全で快適な居住空間、生活環境の創造は誰しもが願うところです。木村研究室では、より安全で快適なインテリア繊維製品の提案とインテリア繊維製品の機能性を探求していきます。例えば、わが国の少子高齢化は加速していますが、高齢者にとって歩きやすい床材、優しい床材の研究開発に取り組み、安全で快適な住環境の創製につなげるとともに研究成果を世界に発信したいと考えています。生活環境と繊維の研究に注力そして全力!!可視光線による実歩行時の粉塵舞い上がり観察結果(上写真).実験用粉塵の舞い上がりに規則性はなく測定環境内に拡散することがわかった.リング精紡機を新規構造紡績糸の例(a)芯鞘構造紡績糸の断面写真(b)三相構造紡績糸の断面写真ab繊維および繊維集合体の構造形成の制御により環境にやさしく、人間の健康を守る繊維の製造メルトブローン複合紡糸装置繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像一本の繊維の中に千本の島成分がある複合繊維の電子顕微鏡写真合成繊維の製造方法において、最も基礎となるプロセスが紡糸および延伸工程である。本研究室では、複合繊維用紡糸機を利用して、芯鞘型複合繊維、海島繊維などの様々な複合繊維を製造し、また紡糸線上および延伸過程中において複合繊維の繊維構造形成過程を究明して、繊維の使える分野を医療、交通などに広げることを目指して研究を進めている。さらに2014年からは、マイクロX線CTを用いた不織布構造の解析に適用する研究にも挑戦している。この方法により、ニードルパンチおよびメルトブローン不織布の内部構造を非破壊で可視化し、断面内の繊維体積分率や繊維配向度と物性の関係を定量的に評価することに成功した。現在、この成果を元に産学連携共同研究に力を入れている。また国際共同研究や留学生の受け入れなどの国際連携にも積極的である。1 mm 10 mm 15 mm 5 mm Penetration depth of needle: 6.4 mm Penetration depth of needle: 12.7 mm Penetration depth of needle: 19.0 mm MD PE PET ダイコレクター間距離差XCT測定による不織布内部構造の可視化二つ成分を芯と鞘に配置させ、一本にした芯鞘複合繊維の断面写真独自の延伸方法で作製した多孔性繊維の断面写真。中空率63%先進繊維工学コース先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース金慶孝教授韓国釜山大学繊維工学科卒業後、東京工業大学客員研究員、信州大学繊維学部のイノベーション連携センターの助教、韓国特許庁の特許審査官、繊維学部の准教授を経て2019年より現職。研究分野は繊維・フィルムなどの成形加工および不織布の構造解析、その他の専門分野は国内・国際知的財産権。繊維構造形成過程を究明する研究によって構造が制御できれば、高性能タイヤ補強材や高強度フィルタ-用中空糸など産業用材料として繊維の使える分野をさらに広げられる。また、最近の研究では非破壊で内部構造の観察が出来るXCT測定を用いることで不織布の構造を定量的に評価できることを明らかにした。これらの製造および分析手法を繊維集合体の製造工程に適用すれば、環境にやさしく、人間の健康を守る繊維のせいにも役に立つと考えている。基礎的な部分をしっかり知りつつ、繊維関係の科目や研究の面白さを知らせて、繊維産業の応用面も考えられる人材を育成したい。繊維の一番小さい構造から理解すれば、どんな繊維産業の現場で働いても基本から応用までが理解できる人材となれるでしょう。教員紹介9

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る