繊維学部研究紹介_2018
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動物細胞の免疫を活性化する枯草菌由来成分の探索も進行中写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm微細な変化も見逃さないように電子顕微鏡でも観察します写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm教員紹介枯草菌(納豆菌の類縁菌で産業的にも重要な細菌)は古くから研究されている土壌細菌であり、病原菌から植物を保護したり、有機物の堆肥化や汚水の浄化などに役立っています。また産業面でも、酵素およびビタミン類、抗生物質等の有用物質生産に利用されています。山本研究室では、以前より枯草菌のゲノム解析(国際共同研究)に携わってきました。現在も、枯草菌が保持している約4,100遺伝子が担っている機能を解明するために、国内外の研究室と連携しながら、より詳細な研究が進行中です。このような研究を通して、枯草菌を一つの重要な微生物資源ととらえ、その理解を深めるとともに、さらなる活用に向けた取り組みを進めています。山本研究室では、枯草菌が持つ潜在能力を最大限に活用するために、細胞表層を修飾するテイコ酸ポリマーが担っている機能の解明や、分泌タンパク質がどのような機構により正しい位置に局在化されるのか等について研究を進めています。将来的には、類縁細菌が持つ遺伝子資源の有効利用や、病原性細菌の効率的な防除システムの構築等に応用できる技術の開発を目指しています。卒業後は食品関連会社や製薬会社に就職するケースが多くなっています。また、研究を通して得られた知識や経験を発展させて、国内外の研究機関でさらに研究を続けている人もいます。その他、行政機関や学校教員として、大学で学んだ知識を社会に広める立場に進むケースも見られます。山本博規准教授信州大学繊維学部助手を経て、2007年より現職。研究分野は、細菌細胞で機能している分子の性質を調べる微生物学や、枯草菌等の細菌が持っている潜在能力を活用するための応用微生物学。細胞表層を修飾するポリマー成分を変化させた場合、細胞にどのような影響が見られるか、蛍光顕微鏡等で観察しています研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科微生物資源の有効利用を目指す~枯草菌が持つ潜在能力の解明と応用~教員紹介再生医療はこれまで治療が不可能であった傷害・疾患を克服する可能性を秘めており、幹細胞はその主役を担います。iPS細胞等の多能性幹細胞や、各器官に存在する組織幹細胞を用いた再生医療研究が世界中で展開されています。高島研究室は平成26年度に発足した新しい研究室です。当研究室では、精巣の組織幹細胞『精子幹細胞』に着目し研究を進めます。この細胞は精子形成に特化しているにもかかわらず、稀にiPS細胞のような多能性幹細胞に自発的に変化します。この細胞のユニークな性質を理解し、自在に操る手法を開発することで、再生医療へ貢献する事が当研究室の目的です。精子幹細胞は精子の産生に特化した組織幹細胞でありながら、多能性幹細胞のポテンシャルも併せ持つ不思議な細胞です。従って、男性不妊の治療だけでなく、多能性幹細胞への若返りを通じてiPS細胞と同様に種々の疾患への再生医療にも応用が期待されます。また、精子幹細胞技術を畜産分野へ展開することで、優良な肉質を有するウシ・ブタを効率よく生産する技術に繋がります。このように、精子幹細胞は幅広い分野に貢献する事ができる『万能』細胞だといえます。高島誠司助教東京工業大学大学院で博士号(工学)を取得後、東京大学医科学研究所研究員、京都大学医学部助教を経て現職。学生時代より一貫して再生医療研究に従事。幹細胞の性質の理解と制御を目的としている。精子幹細胞の能力。(左)試験管内で増殖するマウス精子幹細胞。(中)緑色蛍光タンパクを発現する精子幹細胞を移植した精巣。緑色蛍光を発する精子ができている。(右)精子幹細胞由来の精子でできた仔マウス。子供も緑色蛍光を発する(矢印)。精子幹細胞の潜在的多能性。この能力は普段抑制されているが、その抑制機序が破綻すると多能性精子幹細胞に変化する。(左)精子幹細胞から変化した多能性精子幹細胞。iPS細胞と同様の多能性を持つ。(右)多能性精子幹細胞からなる『キメラマウス』。緑色蛍光を発する部分は多能性精子幹細胞に由来する。研究から広がる未来卒業後の未来像再生医療関連産業は、2020年には市場規模が1兆円(経産省試算)を超えるといわれています。当研究室での幹細胞研究の経験を生かし、大学・研究機関に限らずこうした成長産業でも活躍してほしいと思います。応用生物科学科幹細胞の性質を理解し、自在に操る55

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