繊維学部研究紹介_2018
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教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科生体内には様々な機能分子が存在しており、これらの働きによって生物は生命活動を営んでいます。ゲノム解析によって多くの生体機能分子の詳細が明らかにされつつありますが、謎のベールに包まれたものも数多く残されており、有用な機能をもつものが眠っていると考えられます。野村研究室では、生体機能分子の代表と言える「タンパク質」について研究を行なっており、分子生物学的・遺伝子工学的技術を駆使して「酵素などの有用タンパク質の探索・改良」や「タンパク質生産技術の開発」に取り組んでいます。卒業生の多くは研究職に就いており、食品会社や製薬会社、素材・材料を取り扱う化学品メーカーなど様々な分野で活躍しています。他には、研究室での経験を生かして、DNA・遺伝子やタンパク質の分析を行なう仕事も考えられます。野村隆臣准教授ライオン株式会社研究開発本部、信州大学繊維学部教務員・助手・助教を経て、2017年より現職。主な研究分野は分子生物学・遺伝子工学的技術を用いた生体機能分子の解析。有用タンパク質の一つである酵素は、環境に優しい温和な条件で触媒反応することから、グリーンケミストリーの観点におけるキーテクノロジーの1つです。新規酵素の探索や遺伝子工学的改良は、食品・医療・化学合成など多くの分野への貢献が期待されます。また、生体内タンパク質合成の中核を担うリボソームや関連因子を分子レベルで改変することによって、従来の合成系では生産困難であった有用タンパク質の生産を可能にする技術開発に挑戦しています。生体分子の理解から応用〜未利用タンパク質資源の活用と生産技術の開発〜有用タンパク質を遺伝子工学的に改良することによって、従来よりも優れた機能(反応性や安定性の向上)を与えることに挑戦中。タンパク質の精製実験中。生体内に存在する膨大な数のタンパク質から目的タンパク質だけを取り出しているところです。教員紹介堀江研究室では、植物が高塩濃度環境(塩ストレス)から身を守るための仕組みを、分子生物学、分子遺伝学、生理学的実験手法を取り入れながら紐解く研究を行っています。塩ストレスは、世界農業において農産物の収量を著しく減少させている頭の痛い問題です。気候変動に伴う土壌の塩類化が、世界の農地で近年激しく進んでいます。世界人口が増加を続ける傍ら、日本では耳慣れない“塩害”により、近未来の食糧生産が脅かされています。塩害地での農産物収量増産を可能とするために、イネを中心に耐塩性穀類を作出するための技術開発を目指しています。幸いにも私たちの暮らしは、年々より快適になって、食べ物に苦労する事もありません。しかし、一方で化石燃料の大量消費を基盤とした発展のツケが、今我々人間社会に重くのしかかってきています。植物基礎科学から得られた知識をうまく利用する技術があれば、近未来に危惧されている、食糧・エネルギー問題を回避するための、重要な一要素となるのではないかと考えています。これまで植物に関連する種苗会社や製紙会社、あるいは浄水器関連の会社、食品会社や教員と幅広い分野に学生が巣立っています。気候変動を実体験している世代として、自ずと環境問題への意識を持って会社や進路を選択する傾向も少なからずあるようです。堀江智明准教授カルフォルニア大学サンディエゴ校研究員、岡山大学資源植物科学研究所特別契約職員助教等を経て、2010年より現職。研究分野は、植物分子生理学、および植物分子・遺伝育種学。研究から広がる未来卒業後の未来像三大穀類の一つであるイネやモデル植物シロイヌナズナを材料にして、植物の耐塩性の分子メカニズムの解明を目指しています。植物の耐塩性に不可欠であるNa+輸送体に焦点をあて、その輸送活性や生理機能を追求し、将来的には輸送体分子の機能を改変する事で耐塩性植物作出に繋げたいと考えています。応用生物科学科将来の食糧生産の一助となる耐塩性作物を作ろう!54

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