繊維学部研究紹介_2018
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研究紹介研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科アグロバクテリウムは自分の持っている遺伝子を植物細胞に輸送して、植物染色体に組み込むことができる細菌です。つまり自然界で遺伝子工学を行っている細菌です。海外では除草剤耐性ダイズなどの遺伝子組み換え作物の栽培が一般化しています。これらの遺伝子組換え作物の多くはこの細菌を利用して作出されています。野川研究室では、実験操作を簡便化した植物への遺伝子導入法であるinplanta形質転換法の開発や、トランジェント発現による植物での有用物質の生産系の開発を行ってきました。現在、アグロバクテリウムを遺伝子工学的に改良することでもっとすごい能力、例えば葉緑体形質転換を可能にするアグロバクテリウムの開発を行っています。野川研究室では、生物関係の研究を経験してきていることから、食品会社や製薬会社への就職が多いですが、コンピュータ関係、化学関係など様々な会社に就職しています。また、公務員や教員として活躍している卒業生もいます。野川優洋准教授長岡技術科学大学助手、信州大学繊維学部助手等を経て、2009年より現職。研究分野は植物宇亜微生物の遺伝子工学や応用微生物学。アグロバクテリウムのDNAを植物の核へ輸送するタンパク質を葉緑体へ輸送するように改変た。青:核、緑:アグロバクテリウムのタンパク質遺伝子組換えはアグロバクテリウムの例を見ても分かるように、自然界でも起こっている現象です。これを応用することで、現在海外で栽培されている農薬を必要としない作物だけで無く、医薬品や工業原料も植物で作ることができるようになります。今は石油から作られているプラスチックなどの工業原料も遺伝子組換え植物を使用する事で、大気中の二酸化炭素と太陽の光を利用して作られるようになるでしょう。遺伝子工学する細菌アグロバクテリウムを利用する野生型タンパク質改変型タンパク質非形質転換体形質転換体遺伝子組換えでサイトカイニンの発現量を増やし、頂芽優勢の状態から枝分かれが促進したクワ。In planta形質転換法で作出した。教員紹介植物の持つさまざまな機能について研究している田口研究室。例えば、植物は作った物質に糖をつけて細胞の中に貯め、必要なときに糖を外して使う機能があります。この機能を、薬などの物質の加工に応用できないかと考えています。水に溶けにくい物質に植物の酵素を使って糖をつけ、水に溶けやすくしたり安定性を高めたりすることが可能になるのです。その他、私たちの健康に役立つ植物成分がどのように作られているのかを調べています。植物の機能を科学的に追究することで、私たちの快適な毎日につながっていきます。植物は周囲とのコミュニケーションのためにさまざまな物質を作り出しますが、それが、人にとっては薬となったり、いい香りだったりと、体に良い効能がいろいろあります。現在研究室で研究を進めている、植物が身を守るため有害な物質を無毒化する機能は、逆に環境浄化などにも使うことができます。こういった植物が持つチカラを研究し解明することで、私たちの生活に応用できることがたくさんあるのです。人や環境に有益な研究は幅広くニーズがあり、主に食品関連への就職が多い田口研究室。その他にも分析関連の業務を行う会社や、薬品関連、農業関連への就職も少なくありません。高校の先生として活躍している卒業生もいます。田口悟朗准教授信州大学繊維学部や信州大学遺伝子実験施設で助手を務めた後、2008年より現職。研究分野は、植物の有用物質生産に関わる酵素反応や遺伝子解析、その有効活用を図るといった応用生物化学。研究から広がる未来卒業後の未来像桑の葉には、血糖値を下げるのに有効な成分が含まれている。その成分ができる仕組みについて解析をすすめているサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cmサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cm抗酸化物質を含む身近なワサビの葉からDNAを抽出抽出した植物の遺伝子の塩基配列をパソコンで解析するサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm応用生物科学科知られざる植物のチカラ。暮らしを豊かにするその能力とは?53

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