繊維学部研究紹介_2018
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教員紹介ペットボトル等に代表される合成樹脂の高分子膜には、実は非常に細かい隙間が空いています。と言っても、液体は通さずにわずかな気体を通す隙間ですが。この気体の通りにくさ(バリア性)を100万倍ほど高めて、電子材料向けのバリア材ができないかという研究を進めているのが平田研究室。実現すれば、液晶テレビや携帯電話の画面がガラスからプラスチックに切り替わり、価格を抑えることまで可能になります。またガラスよりも薄く、軽く、柔らかいため、破損する可能性も低くなるほか持ち運びも便利になるので用途も格段に広がるという、いま注目の研究分野なのです。バリア性を高め何も通さない高分子膜を開発する一方で、「特定の物質だけを通す」高分子も研究中。この特性を活用すれば、大気から酸素のみを取り出したり、海水を真水に変えるといったことも可能に。人工透析など医療の現場での利用も考えられています。またこの技術は私たちの生活に直接生かせるものだけでなく、研究者が実験を行う際にも非常に役立つ技術でもあり、多くの開発にひと役かっているのです。主に化学系メーカーなどへの就職が多い平田研究室。一方、高分子や膜の製作から評価に至る一連の過程を体験することで、物事を広く見る目を養えることから、業界を超えた幅広い研究分野で卒業生が活躍しています。平田雄一准教授明治大学理工学部専任講師、フランス国立農業研究所博士研究員、信州大学繊維学部助手等を経て、2010年より現職。主な研究分野はバリアフィルムや分離膜、染色化学等。研究から広がる未来卒業後の未来像左が塩水、右が真水で、間にあるフィルムを通して塩分がどれだけ真水側に移動するのかを、塩分濃度計で測定するサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm酢酸セルロースをアンモニアで煮て、高分子の変化を探るサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cm界面活性剤による膜の作製も学生が取り組んでいるサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm化学・材料学科応用分子化学コースペットボトルを水が通り抜ける!?そんな高分子膜の謎を紐解く教員紹介有機分子には、鏡像関係にあるいわゆる左手右手系分子が存在する場合があります。鏡像関係にあるため、それらの化学的、物理的性質はほとんど同じですが、生体にとっては異なる分子であるため、特に医薬品開発においてそれらを区別して合成することが重要になります。当研究室では,それら左手右手系分子の一方を選択的に合成するための不斉触媒の開発を中心テーマとして研究を行っています。新しい触媒の創出には触媒をいかにデザインするかが重要ですが、希少金属を用いない、簡便に合成可能、高選択的高活性をキーワードにした新規な触媒創出を目指しています。有機合成化学は、新しい材料や医薬品を開発する上で必要不可欠な技術であり、新しい反応、触媒の創出は、有用物質の効率的合成のため重要です。当研究室では、有機合成において重要な炭素-炭素結合形成反応の他、基本反応であるエステル化反応を触媒する不斉触媒の開発を行っています。不斉エステル化反応によりバイオマスであるグリセリンの機能化、光学活性アルコール、アミンの簡便供給が期待されます。有機合成化学は、実際に有機分子に触れ、その反応性、物性を体感する研究分野であるため、有機化合物が関係する広い分野での活躍が可能です。製薬関係のほか、低分子、高分子製品製造メーカーに卒業生を輩出しています。藤本哲也准教授信州大学大学院工学系研究科機能高分子学専攻修了。研究分野:有機合成化学。特に有機合成における新規手法、新規触媒の開発。実験室風景。様々な試薬や溶媒、ガラス器具を使い目的とする有機化合物を合成していく。生成物の構造はNMRなどで確認するサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm原子の性質に基づき設計された不斉エステル化触媒とその反応。ジオール中の2つの等価な水酸基を区別してエステル化が進行する研究から広がる未来卒業後の未来像NNOPh2PCatalystRROHOHCatalystC6H5COCl, i -Pr2EtNRROCOC6H5OHUp to 94 % ee18214151617He678910CNOFNe1415161718SiPSClAr33343536AsSeBrKr化学・材料学科応用分子化学コース精密有機合成を可能にする―原子の特性に基づく高選択的有機分子触媒45

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