繊維学部研究紹介_2018
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繊維は目に見えない高分子鎖を一方向に並べることで作られます。この高分子鎖はひものように長いため、互いに絡み合うという特性をもっています。この特性を高度に制御する(解きほぐす・並べる)ことができれば、繊維材料の更なる高性能化・高機能化が期待できます。また、細長い繊維はその形態に基づいて機能の異方性を発現します。よって、セラミックスなどの高機能性材料の繊維化は、新たな機能の創出に繋がります。撹上研究室では、繊維化によるナノ構造制御およびミクロ形態制御を組み合わせることで物質のもつ新たな才能(性質)を引き出し、高分子繊維およびセラミックス繊維のもつ可能性を追求します。研究を通して、社会で活躍できる総合力をもつ人材を育成します。研究室の学生には、自分で考えロジカルに研究を組み立てていくことで、主体性と実行力をもって物事に粘り強く取り組む力、そして問題解決能力と問題発見能力を身に付けて欲しいと思っています。撹上将規助教2008年群馬大学大学院工学研究科修了、博士(工学)取得。日本学術振興会特別研究員、東京工業大学産学官連携研究員、埼玉大学大学院理工学研究科助教を経て、2015年より現職。(上) 高分子鎖の配列と紡糸による絡み合いの解きほぐし(下) 超高分子量ポリエチレンの溶融延伸前後の透過型電子顕微鏡像繊維化によって物質のもつ可能性を最大限に引き出すことで、汎用の材料であっても、新たな機能の発現が期待されます。分子構造、空間構造制御と構造解析、繊維化手法を組み合わせることで、構造形態制御による革新的繊維材料の創製を目指しています。有機溶媒を使わない低環境負荷でのスーパー繊維の作製、特殊機能性セラミックスの繊維化、形態機能性繊維の作製に取り組んでいます。高分子のもつ構造形成能を利用した多孔質材料の形態制御化学・材料学科機能高分子学コース繊維材料の成長を科学する-繊維化で新たな才能を引き出す!-研究から広がる未来卒業後の未来像教員紹介教員紹介私たちは本来有している治癒能力では修復不可能なくらい大きな障害を受けてしまったら、その部分を代替えする物を使って修復しなければなりません。人工的な材料は生体にとって異物として認識されるため、生体はそれを体外に排除したり、無毒化しようとします。実際の医療に用いられている多くの高分子材料もまた生体には異物であり、生体にとって優しいものではありません。生体に、より適合した新しい高分子材料を考え開発することは、様々な疾病の治療を行うためにもとても重要なことです。体の中で組織細胞はたくさんの生体高分子が絡み合った細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれる高分子集合体に囲まれて存在しています。体の器官を修復させるためには、細胞だけでなくこのECMを作り出すことが必要です。私たちは天然物であるタンパク質や多糖類を素材として人工的なECMの開発を試みています。この様な素材は再生医療などの臨床への応用が期待されます。卒業後の進路としては、様々な業種へ進んでいますが、主として材料メーカー、化学メーカーなどへ就職しています。医療器具メーカー、再生医療のような臨床応用を指向した企業で活躍している人もいます。寺本彰准教授民間乳業会社研究員、信州大学繊維学部教務員、助手等を経て、2008年より現職。研究分野は細胞培養用基材の開発、培養細胞の機能評価など。セルロースをナノファイバー化した不織布上で増殖しているマウスの骨芽細胞無菌状態を維持できる装置中で、作製した素材を敷き詰めたシャーレを用いて組織細胞を長期間培養し、機能について検討を行う研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コース生体に優しい高機能材料の開発39

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