繊維学部研究紹介_2018
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教員紹介荒木研究室では大きく2つのテーマで研究を進めています。1つ目は「ポリロタキサン」と呼ばれるネックレス状の超分子を作り、様々な化学修飾を施して、ゲル・繊維・フィルムなどの機能性材料を作ろうとしています。2つ目は、木材や植物から取れる「セルロース」やカニ・エビの殻に含まれる「キチン」の微結晶粒子を使った実験です。これらの微結晶は天然由来でナノサイズ、さらに1本の弾性率や強度は鋼鉄よりも強く、さらに生分解性がある魅力的な材料で、フィルムや繊維の補強材料として応用を進めています。ポリロタキサンと、セルロース・キチンの微結晶。どちらも形や性質が興味深く、大学の学術的な研究対象としても興味深いのですが、将来様々なところで役に立つ可能性も秘めています。ポリロタキサンを混ぜた塗装は、傷がつきにくい携帯電話の塗装として既に実用化されています。また、セルロース微結晶を補強材料として使うための特許出願に向けた研究も進められています。当研究室で自分の興味深いテーマを追求しながら発見した新しい材料が、社会で広く使われるようになることでしょう。設立したばかりの研究室でまだ卒業生が少ないですが、化学メーカー・材料メーカーを中心に先輩方が就職しています。在学中の研究のみにとらわれるのではなく、理系の研究職として社会に出たときに、何を求められるかを身につけて修了してもらうよう指導しています。荒木潤准教授科学技術振興特任研究員、JST-CREST研究員、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社技術顧問、2007年信州大学国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。専門は超分子科学・多糖類科学。ポリロタキサンは幅1ナノメートルの“ナノサイズネックレス分子”フィルムに成型することもでき、携帯電話の外装にも使われた左は植物中のセルロースウィスカー。ナノサイズのファイバーは鋼鉄よりも強い弾性率を持つ。さらに偏光板の間で光る液晶にもなる研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コースネックレス状の「超分子」とナノウィスカー(ナノ繊維)補強材料教員紹介鈴木研究室では、油・有機溶媒・水溶液といった液体をゲル化するような低分子ゲル化剤の開発とその応用研究を行っています。低分子ゲル化剤は、油処理剤をはじめ化粧品、医療・医薬、食品、文房具、塗料・インキ、電子デバイス、液晶等多くの分野でニーズが高い材料です。L-アミノ酸を基盤としているため、生分解性・生体適合性などの特性を持ち環境にやさしい材料です。このような超分子化学をもとにした材料の設計・開発・応用研究は、非共有結合を利用した材料特性や物理化学的性質の制御という点で期待されている研究分野です。低分子ゲル化剤は、超分子ゲル中でナノファイバーを形成するため、多くの応用研究がなされています。例えば、色素増感太陽電池のゲル電解質としての利用、無機酸化物の鋳型重合による酸化チタンナノファイバーネットワークの創製あるいは細胞培養基材としての評価等の応用研究がなされています。今後、高分子と同じように我々の生活の中に低分子ゲル化剤が浸透していくことが期待されています。主に、化学メーカーなどへ就職します。鈴木研究室では有機合成のテクニックの習得や種々の測定機器の使用によって、化学研究者としてのスキルを身に着けられるので、幅広い分野で卒業生が活躍しています。鈴木正浩教授信州大学大学院総合工学系研究科助手、准教授を経て、2015年から現職。主な研究テーマは、低分子ゲル化剤の開発と応用研究、機能高分子材料の開発、人工光合成系の構築等。L-アミノ酸系低分子ゲル化剤によって形成された有機溶媒の超分子ゲル。逆さまにしても落ちてこないほどしっかりとゲル化している低分子ゲル化剤が超分子ゲル中で形成するナノ構造、色素増感太陽電池のゲル電解質、TiO2の鋳型作製、細胞培養基材への応用研究から広がる未来卒業後の未来像トルエンニトロベンゼンエタノールSiオイルアセトン有機溶媒の超分子ゲル超分子ゲルTiO2ナノファイバー色素増感太陽電池繊維芽細胞の培養ゲル化剤のナノ構造化学・材料学科機能高分子学コース世の中のあらゆる液体をゲル化!?超分子ゲルの幅広い応用を模索!37

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