繊維学部研究紹介_2018
36/66

教員紹介市川研究室では、次世代のディスプレイや照明としての利用に期待が高まる有機EL(有機LED)の研究開発を行っています。非常に薄い上に自ら発光するなど、現在主流となっている液晶にはない多くの特性を持っています。海外の大手企業も注目し、市川研究室と協同しているこの技術。実現すれば、天井や壁全体を照明にすることや、テレビやパソコンのモニタを紙のようにクルクルと丸めて持ち運ぶ、なんてことも可能に!現在は消費電力量の削減が大きな課題ですが、SF映画にでも出てきそうな未来の生活が、有機ELによって始まろうとしています。有機ELの研究において市川先生が消費電力削減と同時に取り組んでいるのが、原料の選定。現状ではレアメタルや貴金属といった希少元素を使用することが想定されていますが、もっと容易に入手できる、炭素のような元素を原料にすることをめざしています。またこの有機ELの研究に加えて、有機半導体や有機太陽電池等の研究も活発に行われ、豊かで持続可能な社会の実現に向けて期待されています。卒業後の進路としては、素材メーカーや化学メーカー、材料メーカーに就職する学生が多いのが特徴。もちろん電機メーカーへの就職もあります。また有機ELの開発は印刷会社でも行っているため、大手印刷会社へ就職した学生もいます。市川結教授宇部興産株式会社高分子研究所研究員、信州大学繊維学部助手、准教授を経て、2013年より現職。有機半導体デバイスや有機光電子材料といった機能材料・デバイスや物理化学が研究分野。研究から広がる未来卒業後の未来像これが有機EL。導電性高分子である有機ELはLEDと違い、薄い膜のような形状で発光する点がポイントだ研究室で開発した有機半導体材料を溶剤に溶かし基板に塗り、トランジスタが完成。特性を生かした活用例を生み出す研究を行う化学・材料学科機能高分子学コース丸めて運べるTV、照明になる天井…空想上の未来を有機ELが叶えてくれる教員紹介丈夫で長持ちする材料が必ずしも良いとは限りません。使用後に無害な物質となる分解性材料が注目されています。その代表選手が『生分解性プラスチック』です。しかし、微生物の助けが必要なため分解に長時間かかり、また分解した物の回収・再利用も難しいのが現状です。必要な時に必要なだけ分解し、分解物も簡単にリサイクルできれば、環境に優しいだけでなく機能性材料としてその用途は大きく広がります。伊藤研究室では、界面活性剤やプラスチックなど身近な有機材料に『化学分解性』を付与することを研究中。伊藤研究室では、光照射や酸・アルカリの添加ですばやく分解・分離回収できる有機材料を開発中。界面活性剤やポリマーは、身近にある製品(洗剤、プラスチックなど)としてだけでなく製造過程や廃棄物の処理工程など広範囲に使用されているので、分解性を付与できれば、多くの分野で品質向上、工程の効率化、安全、環境保全などが期待される高機能エコマテリアルとして活躍するでしょう。塗料や接着剤、繊維、樹脂などポリマーを扱う化学メーカーや薬品会社に就職する学生が多いのが特徴。研究室における有機材料の合成から評価までの幅広い経験を生かして、有機材料メーカーの研究開発職などでがんばっています。伊藤恵啓教授信州大学繊維学部助手、助教授等を経て、2009年より現職。研究分野は高分子合成化学、光化学、有機材料化学。アルカリ加水分解性の界面活性剤(洗剤)溶液に弱アルカリを少量加えると直ぐに泡が消えて固体(分解物)が析出する加水分解性界面活性剤を含む高分子微粒子(ラテックス)を用いると、速乾性などの高機能性の水溶性塗料や水溶性顔料インクができる研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コース環境に優しい機能性材料の開発~必要な時に分解・回収~6 m60 m繊維表面への塗料の塗布(電子顕微鏡写真)紙表面への塗料の塗布(電子顕微鏡写真)紙表面への顔料インクの塗布35

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る