繊維学部研究紹介_2018
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教員紹介燃料電池は、環境問題・エネルギー問題を解決するための切り札として期待されています。福長研究室では、白金を使わない燃料電池の開発に取り組んでいます。その一つは、高温で作動する固体酸化物形燃料電池で、反応速度が高いため貴金属の触媒を必要としません。もう一つは、低温で作動して扱いやすい固体高分子形燃料電池で、白金の代替触媒として、シルクを原料とする活性炭の開発に取り組んでいます。いずれも、電極の中のガスやイオン・電子の移動が重要で、新規材料の開発とともに、電極構造の最適化に取り組んでいます。燃料電池は、エネルギーを効率よく取り出せる夢の技術です。大型の発電所、家庭用の発電機、自動車の動力、携帯機器の電源、人工臓器の動力など用途は広がっていきます。しかし、普及には低コスト化が欠かせません。シルクを原料とした活性炭は安価な触媒として期待されますが、どうして触媒性能を有するのかはまだ謎も多いのです。この研究が進み、電極の白金を代替することができれば、燃料電池はどんどん身近に使われるでしょう。化学工学を活かせる分野は多く、卒業後は化学、電気・電子、自動車、エネルギー関連など幅広い分野に就職しています。福長博准教授信州大学繊維学部助手を経て、2009年より現職。主な研究分野は、固体酸化物形燃料電池や固体高分子形燃料電池を対象とした化学工学と電気化学。作製した固体高分子形燃料電池の電極固体酸化物形燃料電池の発電装置研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科ファイバー材料工学コース燃料電池を身近なエネルギーに!教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科ファイバー材料工学コースバイオマス資源の有効利用で持続可能社会の実現を目指す油脂や木材、微細藻類などの様々なバイオマスは光合成により大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長します。そのため、バイオマス由来の燃料は燃焼しても大気中の二酸化炭素を増加させず、カーボンニュートラルなエネルギー源として期待されています。しかし、バイオマス資源のエネルギー利用実現のためには、物質やエネルギーの転換技術の高効率化が不可欠です。当研究室では、バイオマス資源を安価なプロセスを用いて高品位な燃料や化学品原料に効率的に転換することを目指し、触媒反応機構の解明や新規触媒の設計に取り組んでいます。化学工学はものづくりの現場で役に立つ実学であり、活躍できる分野は化学、エネルギー、材料、プラントエンジニアリングなど多岐にわたります。当研究室では、化学工学や反応工学の知識の習得はもちろん、その知識をどのように活用するのかを研究を通じて身に着けてもらいたいと考えています。嶋田五百里講師2013年に東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了し、博士号(環境学)を取得。日本学術振興会特別研究員、信州大学繊維学部助教を経て、2018年より現職。専門は化学工学、反応工学。バイオマス資源のエネルギー・化学原料利用。触媒反応による効率的な物質転換技術が実用化の鍵となる。触媒反応試験の様子。大きな装置に見えるが、これでも"小型反応試験装置"。研究に必要な実験装置は自分達で作ることも多い。(上)反応に用いる固体触媒。(下)微細藻類が生産した油脂を原料に用いた触媒反応生成物。ガソリン代替燃料として利用できる。再生可能エネルギーであるバイオマス資源を用いたエネルギーシステムの構築により、化石燃料などの枯渇性資源に頼らないクリーンで持続可能なエネルギー社会の構築を目指します。さらには、バイオマスから様々な有用物質への転換手法を構築することで、現在は石油資源から生産されている多くの化学製品の代替も可能となります。輸送用燃料・化学品原料バイオマス資源CO2光合成固定化触媒反応による物質転換33

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