繊維学部研究紹介_2018
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教員紹介生体を機械部品として、直接的に人工システムに取り込むことで、従来の機械システムとは異なる新しい技術の創出を目指しています。例えば、筋肉は、生物が40億年の進化の末に獲得した大変優れたアクチュエータ(駆動源)です。そこで、モーターの代わりにこの筋肉を取り込むことで、電気や化石燃料を必要としないだけでなく、生体の持つ自己組織化・自己修復機能を備えたバイオハイブリッドロボットの創成を目指します。また一方で、細胞を磁場によって操作する技術を確立し、細胞から移植可能な生体組織を組み上げるシステムの開発も行っています。現代社会は化石エネルギーに依存していますが、それらの可採年数は150年程度と言われています。筋肉で駆動するロボットが出来れば、エネルギー問題を解決することができます。また、各組織の細胞へと分化することが出来るiPS細胞が注目を集めています。これらの細胞を用いて移植可能な三次元組織を構築することが出来れば、再生医療の発展に大きく貢献できます。2014年4月始動の研究室のため、卒業生はまだ出ていませんが、前職での卒業生は、生物が分かる機械屋として医療機器メーカー、微細加工技術を活かして精密機器メーカー等に就職しています。秋山佳丈准教授東京農工大学大学院を修了後、日本電子株式会社、東京農工大学生物システム応用科学府特任助教、大阪大学工学研究科講師を経て、2014年より現職。専門分野は、生物工学、微細加工、再生医療とそれらの融合領域。研究から広がる未来卒業後の未来像サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm生体の筋肉によって動くデバイスの例(左)自律歩行するマイクロロボット、(右)大気中で動くマイクロピンセット磁場によって細胞から組織を組み上げるイメージ(左)とそのためのシステム概要(右)機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコースバイオハイブリッドによる新技術創出マイクロロボットから再生医療まで教員紹介私の研究室では、「人間」、「非侵襲」、「バイオセンサ」を研究のキーワードとして、だ液分析による生体計測という新しい研究分野を切り開いています。非侵襲生体計測とは、ヒトの体に傷をつけることなく様々な情報を取り出し、健康の維持や病気の診断・治療に利用するための技術です。また、生体の優れた機能を模倣することで(バイオミメティクス)、物質表面の撥水性や親水性を物理的に制御する技術や,機械強度に優れた3次元樹脂成形物の試作を行う「3Dプリンタ」の研究を行っています。渋滞する自動車、店頭に山積みされた食品、地震で揺れるビル等では、様々な量が時間とともに変化し続けています。自然や人工物だけでなく、人の体も情報を発信していて、呼吸数や表情の変化だけでなく、唾液中のマーカーとして表に現れます。これらの生体情報を、科学的な見地に基づいてしなやかに統合することで、心身ストレスを可視化しようとする試みが活発化しています。将来は、病気の超早期診断や予防医療技術に繋がると考えられます。卒業生は,医療機器メーカーや製薬メーカーといった企業はもちろん、製品が人とかかわりの強い自動車メーカー、食品メーカー等で活躍しています。「人間を科学する」能力や専門性は、これからの新しい社会へ貢献できることでしょう。山口昌樹教授信州大学を卒業後、ブラザー工業㈱,東京農工大学助手、富山大学助教授、岩手大学教授を経て2015年より現職。研究分野は生体医工学、バイオミメティクス,ストレス科学。研究から広がる未来卒業後の未来像だ液を分析して人の心身ストレス度合を可視化するセンサハスの葉の撥水性(左)を人工的に作り出した表面(右) 機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース生体は情報を発信する25

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