繊維学部研究紹介_2018
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教員紹介体温に影響する環境側の要素には、気温だけでなく日光やコタツなどの熱放射、扇風機などの気流、湿度、衣服があります。特に衣服や気流は環境の温度を変えず、好みに合わせて暑さ寒さを調節できます。佐古井研究室では、衣服や気流を有効に活用していくため、身体からの熱・湿気輸送現象の測定、その装置開発や数値シミュレーション、それらを入力として身体の温度分布を予測する数値人体モデルの開発、身体を水の蒸発によって冷やす冷却服の開発、熱中症と衣服や気流の関係の解明などに取り組んでおります。物理的には「熱・湿気輸送」の解明、生理・心理的には「体温や汗と暑さ寒さの対応」の解明に取り組んでおります。部屋全体を暖める、冷やすといったこれまでの暖冷房は、多くのエネルギーを消費してしまいます。衣服や気流により、個々人の周りのみにおいて好みにあう微気候を形成できれば、夏冬のエネルギー需要を無理なく抑制でき、エネルギー不足の解決に繋がります。また、気温が同じでも、湿度や着衣、気流、日射などによって熱中症リスクも異なります。衣服や着衣などを活用し、エネルギー消費を抑制しつつ、良好で安全な居住環境を実現していきます。これまでの卒業生は住宅メーカーや保険会社の大手に就職。研究室では、与えられた研究課題を行うというよりむしろ、社会へ出る準備として、未知の研究課題への取組み、特に考えて工夫することを通じて、自分で考えて行動できる自主性を養うことに重点が置かれている。佐古井智紀准教授東京大学生産技術研究所、産業技術総合研究所、信州大学国際若手研究者育成拠点助教、講師を経て、2015年より現職。温熱環境評価や温熱生理反応解析で、3件の空気調和・衛生工学会賞などを受賞。研究分野は温熱環境工学。水分蒸発による冷却を利用した冷却衣服の実験風景。温度が高く風だけでは快適にならない環境でも十分な冷却効果が得られる写真サイズ高さ2.65cm×幅3cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm感性工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像気流、気温、熱放射、それぞれ効果を測定する装置の開発シミュレーションにより、気温分布や体温分布などを予測写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm先進繊維・感性工学科感性工学コース暑さ・寒さと熱の科学。衣服や気流を活かして好みの熱環境を教員紹介ものづくりを行ううえで、材料は欠かせません。これまでの材料の主役は金属材料やセラミックス材料など固いものが主流でした、これらに変わって、今後は高分子などのやわらかい材料がますます重要性を増していくことでしょう。高分子材料は,炭素を主成分として、これに窒素や水素などが結合してできる鎖状の長い分子であり、分子の形態がさまざまに変化することから、様々な性質を示します。また、生体に対して無害であることから、工業製品はもちろんのこと、生医学材料としても大きな可能性を持った材料であるということができます。高分子材料には、プラスチックのごみ問題という暗いイメージが付きまとってきたのも事実です。そこで現在は、多糖類など生物から取れる高分子材料の研究が盛んに行われています。このような研究により、将来は、環境にやさしい高分子材料が数多く生まれてくることが期待されています。また、一種類の高分子だけでは、十分な性質が発揮できない場合、複数の高分子材料を混ぜて(ブレンドして)新たな材料を開発するポリマーブレンド材料の研究も盛んに行われています。高橋研究室でもこのような研究を行って将来の高分子材料の発展に寄与したいと考えています。卒業生の多くは、化学系の企業に就職し、活躍しています。化学系の企業のほとんどは高分子にかかわっており、高分子を研究した学生に対する企業のニーズは高いといえます。こうした企業の場合、学部卒よりも大学院卒を採用する傾向があり、卒業後は大学院へ進学するのが望ましいようです。高橋正人准教授1986年工学博士取得、その後東京都立大学(現在の首都大学東京)を経て、1991年より現職。研究分野は高分子材料の構造制御(天然物多糖類の構造形成とその制御、ポリマーブレンドの構造制御、両親媒性高分子の構造形成とその制御など)。研究から広がる未来卒業後の未来像カラギナンゲル(左)とカルシウムアルギン酸ゲル(右)。これらはいずれも多糖類であり、生体に対して無害である。ゲルは創傷被覆剤などとして生医学方面に利用できる可能性があるCaAlg gelCagtype1ポリマーブレンドの海-島構造(左)と共連続構造(右)、構造を制御することで様々な物性を持った材料を実現できる可能性がある先進繊維・感性工学科感性工学コース21世紀はやわらかい材料の時代ですー高分子材料の未来の可能性を追求ー15

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