繊維学部学部案内2018
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医療界の常識の範囲を鮮やかに超えてゆく 手術ロボットの開発。医療界の常識の範囲を鮮やかに超えてゆく 手術ロボットの開発。手術現場にある装置は、すべて同じメーカーで造られているわけではないため、互換性がありません。そのため、複数の機器の協調動作を実現するために世界的な規格をつくり、一つのシステムとして統合するミドルウェアの開発も進めています。このように、医療ロボットの研究は明確な「ニーズ」が基盤。医師が実際に使用して初めて評価できるものであり、医療の知識や機械的な実現性など、専門知識が必要なため、国立がん研究センターや医科大学、メーカーなどと共同研究を進めています。医療現場の声から始まる、実用化に向けたチーム研究。手術ロボット実現への課題は、自ら考えて動く「自律性」。内視鏡を用いるような複雑な手術を行う場合、二本では手が足りません。そのため、医学の知識を持った医師がカメラ助手として立ち合い、手術部の視界を確保しながら手術が行われているのが現状。そこで、貴重な医師の手を確保し、手術を効率化するために、カメラ助手の役割を果たす手術支援ロボットの構想を進めています。医師が見たい視野を判断できるロボットの“自律性”をいかに実現するかが、大きな課題です。あらゆるモーターの代替品となる可能性を秘めた身近な素材。医療現場で使用するアクチュエーター(エネルギーを運動に変換する駆動装置)は、安全性や清潔性などの制約があります。これまで水圧や空気圧など、さまざまな駆動方法を考えてきましたが、いま注力しているのが熱で伸縮する「ナイロン繊維」。軽い、低コスト、応答性が高いなどの特性を兼ね備え、人間の筋肉と同等、またはそれ以上のパフォーマンスを可能にするポテンシャルを秘めています。ナイロン製のアクチュエーターが実用化すれば、従来の装置の概念を覆す、コンパクトな機器が世の中に溢れるでしょう。6

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