農学部研究紹介2018-2019
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きのこ栽培、タンパク質工学研究、創薬・抗生物質開発、醸造・発酵食品・機能性食品開発、腸内細菌研究、新エネルギー・バイオ燃料開発、砂漠緑化・低肥料化など、近年繰り広げられる菌類・微生物研究は魅力と期待に溢れています。2016年、信州大学における菌類・微生物学分野における高い実績を継承し、本学の研究ワンランクアップのために、本研究センター(CFMD)の設置に至りました。CFMDには、農学・繊維学・工学・教育学系の中堅・若手教員を中心とした菌類・微生物研究者が結集しており、以下の3部門体制でと進的研究を行っています。研究センターの名称にある「ダイナミズム」とは、「内に秘める力」を意味します。また「創発」とは、これまでのシステムからは予想できないような、新しい概念・特性が生み出される現象として定義されています。CFMDでは、信州を覆う森林・山岳中心とする生態系の主要構成要素としての菌類・微生物から、循環型社会の構築に不可欠な菌類・微生物を探索し、その機能について高次・多角的に利用する技術を開発しています。また、菌類・微生物およびその代謝産物が有する多彩な機能、さらには遺伝子工学技術により生み出される人工タンパク質の可能性に焦点をあて、菌類・微生物ダイナミズムの創発研究を行っています。菌類共生科学・資源利用科学部門:部門長山田明義(農学部)本部門では、地域資源としてのきのこ類を高度・多面的に活用するための生物工学的な手法の開発、ならびに、20世紀後半に新たな生物学の一分野として台頭した菌根共生に関する研究に取り組んでいます。前者は、きのこ産業の国内拠点である長野県に存在する地理的・社会的特性を重視したもので、国内の国立大学では最初に教育・研究分野を整備し現在に至ります。後者についても、国内では創始期に教育・研究分野を整備し、農業系と林業系の双方に関係する領域を守備範囲とする、数少ない大学です。これらの点は、両研究分野を包含したキーワードである菌類学の分野において、信州大学が論文の世界ランク50位に迫る現状に貢献しています。生体調節統合制御部門:部門長片山茂(農学部)乳酸菌や酵母などの微生物は、その代謝特性により発酵産物に風味や保存性に影響をもたらすだけでなく、微生物そのものや微生物によって生産させる物質により新たな機能性を獲得することが知られています。近年、このような微生物の生体における認識は、生体での非常に多岐に渡る細胞で行われていることが明らかとなりました。本部門では、循環型・健康長寿社会の実現に向けて、有用微生物が秘める生体調節機能を探索し、疾患予防または加齢に伴う老化進行を抑制する次世代の機能性食品を開発することを目的としています。2015年より食品の機能性表示に関する新たな枠組みとして機能性表示食品制度が設けられ、有用な機能性を活かした食品製品開発のニーズが高まっています。こうした社会の要請に応え、産業振興の礎となるライフ・イノベーションの創出を目指しています。超分子複合体部門:部門長新井亮一(繊維学部)本部門では、微生物のダイナミズムを分子レベルで解明し、応用することを目指しています。特に、微生物ダイナミズムの根源とも考えられる「超分子複合体」に焦点を当てた基礎研究及び応用研究を展開します。超分子とは、複数の分子が共有結合以外の様々な相互作用により秩序だって集合した分子群として定義されています。タンパク質や核酸をはじめとした多くの生体高分子は、複数の分子同士やさらに金属や低分子化合物の補因子等と共に複合化して超分子複合体を形成して、複雑かつ高度な機能を発揮しています。様々な生体分子の相互作用が織りなす動的な超分子複合体形成は、まさに生命ダイナミズムの源であると考えられ、微生物由来超分子複合体の研究は、生命ダイナミズムの理解や応用に貢献することが特色と言えます。お問い合わせ先cfmd@shinshu-u.ac.jp菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター(CFMD)Research Center for Fungal & Microbial Dynamismセンター長下里剛士(農学部)399−4598長野県上伊那郡南箕輪村8304信州大学伊那キャンパス内http://www.shinshu-u.ac.jp/institution/cfmd/43

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