農学部研究紹介2018-2019
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植物栄養学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像穀物の安全性や高品質にかかわる専門の研究や勉強をした研究室の学生は、食品関係の企業、農業試験場(公務員)、進学による研究者への道に進んでいます。全員が「食や環境」に関する専門職についています。井上直人教授信州大学卒業。長野県職員や、京都大学農学部助教授を経て、2002年より現職。研究分野は、高地の作物学、植物栄養学、民族植物学。ポリフェノールが多いピンク色のソバの品種の開発(左)ソバ種子の構造や化学・物理的性質を解明する(右)ソバ粒を粉にしないで、そのまま麺にする装置の開発(左)や感性に合った伝統的な食品デザイン(右)の研究を地域企業と行うおいしい穀物を科学する世界最高品質のソバやコメをめざす人類にとって最も大切な穀物。世界最高の品質を持った穀物の品種を開発したり、加工する研究をしています。信州はヨーロッパやアジアの山岳地帯と環境が似ており、高地の穀物の研究に適しています。穀物の進化は労働効率、嗜好性や美意識のような人間的要因が強く働いています。したがって、穀物を理解するには、生物学以外に人文科学的な複合的な視点も必要です。そこで、井上研究室では、穀物、土壌、気象、加工などに加えて、伝統的な雑穀の知識や品種も幅広く研究しています。穀物の「おいしさ」は、風土によって作られる。風土は土壌、水、風、精密な栽培技術などです。風土はあたりまえすぎて気づきにくいものです。そうしたいろいろな要因の間の関係を『作物学』や『植物栄養学』は精密に研究しています。特に、人の目に見えない土壌や葉や穀物の化学成分や、光合成の生理的な活動をレーザーを用いて非接触・非破壊でモニターする技術開発をしています。これによって、『勘』に頼った穀物生産から脱出し、高品質で環境に負荷をかけない食料生産が可能になります。(詳細は、井上著「おいしい穀物の科学」、講談社ブルーバックスを読んでください。)植物資源科学コース入枝泰樹助教博士研究員を経て2016年10月より信州大学農学部。糸状菌(カビ)と植物の感染・防御機構を解明する研究に取り組んでいる。両者の生物間相互作用に着目した病害防除法の開発に繋げたい。植物病害を引き起こす原因の70~80%は糸状菌(カビ)です。糸状菌病を防除するためには、病原糸状菌と植物の相互作用を深く理解する必要があります。本研究室では、多種多様な農作物に甚大な被害をもたらす炭疽病菌(Colletotrichum属菌)と、その宿主・非宿主植物を対象に、両者の共進化の結果である感染・防御戦略を研究しています。病原糸状菌はどうやって植物への感染を成立させるのか。そして、植物はどのように糸状菌の攻撃を防ぐのか。これらの課題を分子レベルで解明することを目指しています。炭疽病菌は非常に種類が多く、様々な植物に感染被害をもたらしている植物病原糸状菌(カビ)です。その感染メカニズムを完全に掌握し、植物が本来備える免疫系を十分に理解すれば、植物保護に大きく貢献できます。また、カビと植物の相互作用システムは学問としても魅力的な素材です。植物保護の観点に立ちながら学問を追求することで、新しい「糸状菌病防除技術の開発」と「自然界の真理の探究」を同時に行うことができると考えています。大学、研究所、企業等の研究従事者に必要な生命科学の基礎および専門の知識・技術が習得できます。また、論理性・問題抽出力および解決力・表現力等、社会で役立つ能力が磨かれますので、カビや植物に関連しない様々な分野でも活躍できる人材になります。先生のお写真炭疽病菌等の植物病原糸状菌(カビ)はそれぞれの宿主植物の免疫系を抑制して感染するウリ類炭疽病菌が感染したキュウリの葉(左)緑色蛍光タンパク質で可視化したカビの活物寄生型侵入菌糸(右)10µ1宿主細胞を殺し、栄養を摂取する植物資源科学コース研究から広がる未来卒業後の未来像微生物植物相互作用学研究室カビと植物が織りなす共進化คഅĆ܆؉༅Ȇԇ༈27

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