農学部研究紹介2018-2019
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आȇԇЇଅਇଅサリチル酸は世界を救う!?植物の病にもヒトの病にも効きます加藤新平准教授日本学術振興会特別研究員(DC1/PD)ならびに海外特別研究員を経て2008年11月より信州大学農学部。植物が病原体(糸状菌、細菌、ウイルス等)から身を守る機構を解明し、病気に強い植物を創ることが目標。加藤新平研究室では“サリチル酸”という化合物に注目して研究が行なわれています。皆さんはサリチル酸をご存知でしょうか?サリチル酸は代表的な解熱鎮痛薬であるアスピリンの有効成分です。それでは、サリチル酸はどこから来たのでしょう?サリチル酸は植物に含まれる薬理成分として発見されました。植物において、サリチル酸は病原体と戦う抵抗反応を誘導する重要なシグナル物質です。植物がサリチル酸を合成する機構が明らかになれば、病気に強い植物や次世代型の農薬、食べる解熱鎮痛薬の開発に応用できるかもしれません。加藤新平研究室が研究対象としているサリチル酸は、植物の病気にも我々人間を含む動物の病気にも有効な生理活性物質です。研究室では、「植物が長い・長い進化の過程で発明したこの生理活性物質を有効利用できれば、植物の病気あるいは動物の病気を防ぐ新たな方法を開発できるかもしれない」と考え、植物がサリチル酸を合成する分子機構やサリチル酸が植物の病気を防ぐ分子機構の解明に日々取り組んでいます。OHCOOH(左)サリチル酸の構造。(右)普通の植物(A)は病気に勝つが、サリチル酸を合成できない植物(D)は病気に負けてしまう(PlantCell11:1393–1404,1999)サリチル酸多くの学生は卒業後も大学院に進学し研究を続けるそうです。大学院修了生は、学んだ専門知識を生かして、主に農園や食品会社で活躍中。研究室の方針が“自主性を重んじる”であるため、常に自分で考えて行動することが求められますが、その分卒業時には論理的に考え、自主的に行動する能力が備わるそうです。サリチル酸生合成/機能の分子機構の解明に日々挑戦している研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース土壌生物学研究室植物微生物間相互作用から環境保全型農業を探求する齋藤勝晴准教授博士研究員を経て2006年7月より信州大学農学部。植物微生物相互作用の植物栄養学的側面に関心があり、環境保全型農業への応用を目指している。土壌生物学の研究を通して、資料調査・課題抽出・計画立案・課題遂行・報告の一連を習得し、課題に取組む能力を向上させることが出来ます。卒業後は農業生産・指導、食品会社等で活躍出来る人材になります。化学肥料や農薬を使う量を減らし環境への負荷を低減することは現在の農業において重要な課題の一つです。私たちは植物と微生物との共生に注目し、生物の持つ能力を最大限に引き出すことで環境に配慮した生物生産に貢献することを目指しています。研究対象は、植物のリン酸吸収促進に関わる菌根共生(多くの植物種と菌類の共生)や生物窒素固定に関わる根粒共生(マメ科植物と細菌の共生)です。植物はバクテリアやカビなどと共生している菌根根粒最新の手法を駆使して植物微生物共生を研究しているもともと別々に生活していた生物同士が、どのようにして共生を始めたのか?植物は微生物からどうやって養分をもらっているのか?私たちはそれらに答えるために、遺伝子や細胞、フィールドレベルで解析を進めています。このような基礎的な研究から、環境に配慮した生物生産を行うための共生の利用について考えています。研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース26

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