農学部研究紹介2018-2019
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富岡郁夫助教慶應義塾大学(特任助教)・実験動物中央研究所(兼任研究員)、国立精神・神経医療研究センター(若手育成型室長)を経て、2014年より現職。専門は発生(生殖)工学・神経科学。応用生殖科学研究室では①動物生殖学、②発生工学(生殖工学)、そして③神経科学の3本柱で研究をおこなっています。①動物生殖学研究では、立体構造を保持した状態での新規卵胞・卵子培養系の確立、および代謝・栄養シグナルと卵胞発育・排卵メカニズムの関連の解明を目指しています。②発生工学研究では、目的遺伝子のない動物(ノックアウト動物)や遺伝子改変動物を作出し、さらにES細胞やiPS細胞も作出します。また③神経科学研究では、小型の霊長類(マーモセット)を用いて神経難病モデルの作出と疾患バイオマーカーの開発を目指します。遺伝子・分子レベルから個体レベルまでオールラウンドな研究、そして基礎研究では終わらない実践的研究を目指します。生命の始まりである受精卵を扱う生殖学・発生工学は、個体の遺伝子改変を可能にし、あらゆる研究分野へと繋がります。その一つが神経難病モデル動物の作出であり、良いモデルの開発は治療法や疾患を予知できるバイオマーカーの開発に繋がります。また、栄養と生殖現象の関係を解明することで、これまで原因不明であった生活習慣病から卵巣機能障害に至るメカニズムを解明できます。農学分野からの多くの医学応用技術・知見の創出に貢献できます。研究者・製薬会社・食品会社・病院・生殖医療クリニック・胚培養士・細胞培養士・ノーベル賞学者など生命の始まりの探求̅༂̅ఇ̅༄༂ԆअȅȇABCDA哺乳動物の卵子を顕微鏡下で操作し、体細胞クローン動物や遺伝子改変動物を作出する。マイクロマニピュレーター(左)と胚操作(右)。小型の霊長類であるマーモセット(左)と、そのES細胞(右上)およびiPS細胞(右下)。ES細胞iPS細胞コモンマーモセットマイクロマニピュレーターホールディンイピペットインジェクションピペット卵子応用生殖科学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像動物資源生命科学コース生殖細胞工学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像動物資源生命科学コース諸白家奈子助教大学院博士課程を修了後米国や国内での博士研究員を経て、2017年より現職。研究分野は動物生殖学、発生工学。哺乳類の卵母細胞と卵胞の発育過程の解明、卵巣の体外培養技術の開発を行っている。哺乳類の卵巣内では未発育な生殖細胞が袋状の構造をとる卵胞に一個ずつ囲まれて数万から数十万個存在します。しかし、そのうちの半数以上は卵胞の発育過程で死滅し、一生涯で成熟卵母細胞にまで発生し排卵される卵子の数は、発生・分化した全生殖細胞のうち1%未満です。実際に、どのような資質をもつ卵母細胞・卵胞が発育を開始するのか、また発育の過程で死滅する卵母細胞・卵胞はどのような特徴をもつのかは明らかになっていません。これらの現象を解明することで、産業動物の効率的な生産・増産、絶滅危惧種の保存、さらに生殖医療への応用を目指しています。動物が生まれるために、卵母細胞の発育過程は雌動物で行われる最初の生殖活動です。しかし、体内現象であることからその解明は難しく工夫が必要です。そこで、生殖細胞工学研究室では、マウス卵巣組織等を体外で培養する体外モデルを用い、複雑な卵母細胞発育現象を体外で可視化し解析する技術の開発を行っています。卵母細胞の発育機構が解明されることで、卵巣内での卵胞発育を人為的に調節することが可能になります。将来は、産業動物のより効率的な繁殖方法の開発に繋がると考えられます。卒業研究等を通して、科学の本質を理解し、課題を論理的にそして自由に考えディスカッションする力を養うことで、将来の目指す道への土台作りができます。卒業後は大学院進学、各種メーカーでの研究・開発職、公務員等の様々な分野での活躍が期待されます。̅༂؇༏ȅ̇؇ȅȇ༂ԇ؇̆私たちは卵巣の体外培養技術を用いて、卵母細胞と卵胞の発育機構のメカニズムの解明を目指す。生後10日齢マウスの卵巣切片の染色像A:卵母細胞はそれぞれ1個の卵胞に存在し、卵母細胞は卵胞が発育するのに伴って発育する。B:Aの一部拡大像.卵巣にはたくさんの未発育な卵胞が存在する(破線で囲まれた部分)。B卵母細胞の多くは発育過程で退行する。排卵卵子はどのようなメカニズムによって選ばれるのか?どのような因子が卵胞の発育に関与しているのか?ABB50µm15

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