農学部研究紹介2018-2019
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生命機能科学コースDC機能分子化学研究室梅澤公二助教日本学術振興会特別研究員を経て2016年2月より信州大学農学部に赴任。分子の立体構造と分子認識・生理活性機構の関係を解き明かし、人にとって有益な分子の理論的設計に役立てたい。研究分野は生物物理学や生物情報学。生体内で働いている分子はATPなどの低分子からタンパク質や核酸などの高分子まで様々です。特にタンパク質は代謝や情報伝達に深く関わっており、タンパク質は相手となる分子との結合を介して生命機能を果たしています。そして、相手と結合するには特定の立体構造を形成することが重要です。しかし、最近では不安定かつ不特定な立体構造を形成するタンパク質が注目されています。そのようなタンパク質は病気(例えば、アルツハイマー病など)に関連していることが知られてきました。本研究室では、計算機の力を使って分子が取りうるすべての立体構造を調べ、結合の基本となる立体構造を解き明かし、生体内での情報伝達の仕組みを分子構造から探求しています。立体構造の立場から分子の機能を予測・発見する技術を開発しています。最終的な目標は、ある分子がもつ未知の機能(どんな相手分子のどこに、どのように、どのくらいの強さで結合するのか)を予測可能にすることです。この目標を達成できれば、タンパク質をはじめとする生体分子の情報ネットワークの解明だけではなく、薬になりうる候補分子の選定や薬理作用の再発見、薬物間相互作用、さらには毒性・副作用予測へつながります。私の夢は合理的かつ理論的に薬剤・機能性分子の設計を可能にすることです。計算化学、構造生物学の専門性を高めることができます。研究を通じて問題点の発見、問題解決へ向けた論理的な考察力を養うことができます。卒業後はIT関連会社、製薬会社、CRO等で活躍できる人材になれます。༂Ѕȅ༂आЇईー計算構造生物化学ーABC研究から広がる未来卒業後の未来像梅澤写真「分子」と「機能」の相関性について分子シミュレーションやデータベース解析を用いて新たな知見や規則性を追求していく分子モデリングとプログラミング技術を習得・応用して、タンパク質の翻訳後修飾や構造のやわらかさがもたらす結合調節機構を解明する結合調節機構の解明分子の結合過程・分子モデリング・プログラミング計算機実験分子機能B計算化学構造生物やわらかさ?翻訳後修飾?・多数の構造モデル・分子の動き・溶媒分子など・結合相手・結合構造/部位・親和力などー結合様式ーー立体構造ー分子シミュレーションデータベース解析新たな知見や規則性分子シミュレーションデータベース解析新たな知見や規則性機能性分子解析学研究室筒井歩助教北里生命科学研究所特別研究員、理化学研究所特別研究員を経て、2017年より現職。研究分野はケミカルバイオロジー、生物有機化学、有機合成化学、糖化学。活性物質の中には構造が不安定で実際に生体内や自然界から取り出すことが難しい化合物が数多くあります。また有機合成の理論からは存在していてもおかしくない化合物が、実際には存在が確認されていない場合もたくさんあります。そのような化合物を有機合成の手法で人工的に作り出し、実際に活性を調べることで生命現象や天然物活性のしくみを明らかにする研究を行っています。研究の手法は有機合成、機器分析、生物学的評価と多岐に渡り、化学的手法と生物学的手法の両方を取り入れて実験を進めています。取り扱う物質は主に、ポリアミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク、糖などの天然物です。これまでに特定の酸化ストレス物質を誘発する化合物の生成や、アルツハイマー病に関係するアミロイド-β-ペプチドの凝集を抑制するしくみを明らかにしてきました。生体物質を始め、自然界に存在する機能性物質は私たちの身体に有用なものばかりではなく、害になるものもあります。化合物そのものがもつ機能と性質を明らかにし、活性発現のしくみを明らかにすることは、生理現象の解明だけでなく、機能性食品や健康サプリメント、医薬品といった分野にも応用できると考えています。自然界に存在する化合物からヒントをもらい、有機合成の技術を使ってより有用な構造の化合物を作りだすことにもチャレンジしています。生体物質や機能性天然物の活性の発現やしくみについて有機化学の視点から研究します。有機合成、機器分析、生物評価などの知識や技術を生かし、大学院でのステップアップや化学メーカー、食品会社、製薬会社を始めとする関連企業などでの活躍が期待できます。有機合成化学から生命科学へ~生命現象の解明と有用物質の創生~ABDABC研究から広がる未来卒業後の未来像反応液を精製して生成物を単離し、構造解析や活性試験を行います。合成実験に使うマグネティックスターラー(左上)とロータリーエバポレーター(左下)。実験の合間に勉強やプレゼンテーションの資料作りもします(右)生命機能科学コース11

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