農学部研究紹介2018-2019
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食品化学研究室三谷塁一助教大阪府立大学で博士号を取得後、神戸大学で日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年10月より信州大学農学部。専門は食品化学、栄養生化学。食品成分による脂質代謝調節とオートファジー調節機能に関心がある。肥満や生活習慣病は本人だけでなく、子や孫にまで引き継がれることが明らかとなっていることから、次世代の健康を考える上で、青年、中高年で増加する肥満や脂質代謝異常を改善することは非常に重要な研究分野です。肥満や生活習慣病をはじめとする疾患では、内部環境因子(ホルモンなど)だけでなく外部環境因子(食品成分など)による影響が大きいことから、食品成分による疾病の予防、改善が広く研究されていますが、その分子機構には不明な点が多く残っています。食品化学研究室では、上記の疾病に対する食品成分の機能と、その機能を発揮する際のトリガー(標的分子)を同定することを研究しています。高齢社会である我が国では、医療費の増大が深刻な問題であり、疾病の予防・改善による健康寿命の亢進が課題となっています。肥満は、様々な生活習慣病(動脈硬化症、糖尿病など)のリスクファクターとして知られており、運動不足や食生活の偏りによって引き起こされることから、食品成分を利用した改善策が注目されています。私たちは培養細胞や動物を用いて、脂肪の蓄積を抑制する食品成分を探索し、その作用機構を分子レベルで解明することで、将来的には肥満を予防・治療する創薬の開発へと展開することを目剤しています。研究室では「学生中心主義」と「世界に通用する人材育成」をモットーに研究指導しており、研究室全員が楽しく学べるよう努めています。卒業後は、食品・化粧品・製薬系の企業などに就職し、専門知識を活かして活躍しています。ଆคคฅഇ̆Ѕ༂ЅȆȅ̆ഇと作用機構の解明を目指すB研究から広がる未来卒業後の未来像ブドウの果皮由来のレスベラトロール(Res)(左図)は機能性食品成分として知られており、その細胞内結合タンパク質を右図の様に分子生物学的に探索する。矢印部分のバンドが結合タンパク質を示す。細胞抽出物Res-bound resinResInputPull down−++++++脂肪細胞へと分化マウス線維芽細胞株を脂肪細胞へと分化誘導すると細胞内に脂肪滴(橙色に染色)を蓄積する。このモデルを使用して、細胞内の脂肪滴の蓄積を抑制する食品成分を探索する。生命機能科学コース食品化学研究室野外からのきのこ遺伝資源の収集、組織分離培養、遺伝資源の保存・評価・育種などの過程を経て、優良菌株を選抜しています4年生は各自の研究テーマに沿って実験を行います(左)実験の例:プロトプラストの作出(右上)、DNA多型解析(右下)自動収穫機によって根が均一に切断されたホウレンソウきのこは、抗腫瘍活性を示す物質や血圧降下物質など様々な生理活性物質を含んでおり、従来の嗜好性食物としてだけではなく、薬理効果の高い機能性食物としても注目されています。福田研究室(応用きのこ学研究室)では、我々にとって有益なきのこを効率よく利用するために、生命科学の知見や技術を基盤にして、きのこ遺伝資源の評価やバイオテクノロジー技術を利用したきのこの育種技術の開発研究などを行っています。これらの研究は、きのこ産業で求められているニュータイプきのこの開発や高機能性きのこの育種に繋がります。長野県は食用きのこの生産量が日本一(全国生産量の約1/3)で、様々な種類の食用きのこが生産されています。このような背景からも、新たな特性を保有したユニークなきのこ品種を今後も開発していくことが重要です。現在の研究は、食用や機能性食品素材としてのきのこの価値を向上させるためのものですが、きのこの難分解性物質分解能力や発酵能力などに着目して育種を行えば、バイオリメディエーション(汚染物質分解による環境修復など)やバイオマス返還(きのこを利用したバイオエタノール生産など)にも応用できます。卒業生は、きのこ関連産業だけではなく、食品産業など本コースの一般的な就職先で活躍しています。研究室での活動を通して身に付けた考察力,問題解決能力,プレゼン力などが社会に出ても役立っているようです。大学院に進学して、研究を継続する人も多くいます。福田正樹教授財団法人日本きのこセンター菌蕈研究所を経て、1991年1月より信州大学農学部に勤務。主な研究分野は、きのこ遺伝育種学。༆܅༂܆༂؉༅ą「きのこスーパー系統」の開発をめざす2.組織分離培養1.きのこ遺伝資源の収集5.優良系統の選抜3.きのこ遺伝資源の保存4.遺伝資源の評価と育種50 μm応用きのこ学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像生命機能科学コース6

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