H29_繊維学部_研究紹介
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教員紹介アグロバクテリウムは自分の持っている遺伝子を植物に輸送して、染色体に組込む細菌です。つまり遺伝子工学をするすごい細菌です。海外では除草剤耐性ダイズなどの遺伝子組換え作物が栽培されています。これらの遺伝子組換え作物はこの細菌の力を利用して作出されています。野川研究室では、このアグロバクテリウムを使って、いろいろな作物で遺伝子導入法を開発したり、アグロバクテリウムを植物に感染させて有用物質を作る研究、アグロバクテリウムを遺伝子工学的に改良してもっとすごい力を持つ細菌にする研究を行っています。遺伝子組換えはアグロバクテリウムの例を見て分かるように、自然界でも行われている現象です。これを応用する事で、現在海外で栽培されている農薬を必要としない作物だけではなく、工業原料や医薬品の原料も植物で作ることができるようになります。今は石油から作られている工業原料が遺伝子組換え植物を使うと、太陽エネルギーとCO₂から作られるようになるでしょう。野川研究室では、やはり生物関係なので食品会社への就職は多いですが、コンピュータ関係、化学関係などいろいろな会社に卒業生が就職しています。また、植物防疫など公務員として活躍している卒業生もいます。野川優洋准教授長岡技術科学大学助手、信州大学繊維学部助手を経て、2009年より現職。主な研究分野は、植物や微生物の遺伝子工学や応用微生物学。カブにアグロバクテリウムを接種するアグロバクテリウムからの遺伝子で青い色がついたカブ遺伝子組換えでサイトカイニンの発現量を増やし、頂芽優勢の状態から枝分かれを促進された形態に変化したクワ研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科遺伝子工学する細菌アグロバクテリウムを利用する教員紹介野村隆臣准教授ライオン株式会社研究開発本部、信州大学繊維学部教務員・助手を経て、2008年より現職。主な研究分野は分子生物学・遺伝子工学的技術を用いた生体機能分子の解析。タンパク質の精製実験中。生体内に存在する膨大な数のタンパク質から目的タンパク質だけを取り出しているところです有用タンパク質を遺伝子工学的に改良することによって、より優れた機能(反応性や安定性の向上)を与えることに挑戦中研究から広がる未来卒業後の未来像生体内には様々な機能分子が存在しており、これらの働きによって生物は生命活動を営んでいます。ゲノム解析によって多くの生体機能分子の詳細が明らかにされつつありますが、謎のベールに包まれたものも数多く残されており、有用な機能をもつものが眠っていると考えられます。野村研究室では、生体機能分子の代表と言える「タンパク質」について研究を行っており、分子生物学的・遺伝子工学的技術を駆使して「酵素などの有用タンパク質の探索・改良」や「タンパク質生産技術の開発」に取り組んでいます。有用タンパク質の一つである酵素は、環境に優しい温和な条件で触媒反応することから、グリーンケミストリーの観点におけるキーテクノロジーの1つです。新規酵素の探索や遺伝子工学的改良は、食品・医療・化学合成など多くの分野への貢献が期待されます。また、生体内タンパク質合成の中核を担うリボソームや関連因子を分子レベルで改変することによって、従来の合成系では生産困難であった有用タンパク質の生産を可能にする技術開発に挑戦しています。卒業生の多くは研究職に就いており、食品会社や製薬会社、素材・材料を取り扱う化学品メーカーなど様々な分野で活躍しています。他には、研究室での経験を生かして、DNA・遺伝子やタンパク質の分析を行う仕事も考えられます。応用生物科学科生体分子の理解から応用へ!未利用生物資源の活用や生産技術の開発!56

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