H29_繊維学部_研究紹介
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教員紹介シルクは、繊維の女王として6000年以上前から利用されている優れた衣料用材料です。また、カイコという生物が生産する環境に優しい生物資源材料でもあります。シルクの衣料分野を超えた新しい利用技術の開発を中心に研究を進めています。絹糸は外科手術で傷を縫うときの糸として古くから現在も臨床で使用されています。また、最近の研究では、シルクから作った材料が、再生医療で細胞の足場として、良い性質を示すことが多く報告されています。研究室では、シルクの医療分野への活用を目標に、シルクの構造や性質を新たな観点で解析し、さらに、新しいシルク加工プロセスの開発を通して機能性シルクの創出を目指しています。2012年ノーベル賞のiPS細胞の開発により、再生医療の実現が近づきました。しかし、細胞のみでは十分な再生治療が期待できない場合もあります。組織を再生する細胞を支える材料の開発も重要な課題です。シルクが、その材料の一つとして治療に貢献でき、われわれの研究が多くの患者さんの幸せにつながることを期待しています。シルクは医療分野のみならず、広い産業分野でも活用できる可能性があります。それらを一緒に見つけませんか?工学・農学・医学という学際的、多彩な業種の業際的な分野の研究となりますので、卒業後は、多様な視点から課題を解決できる人材となって活躍してもらいたいと思います。玉田靖教授京都大学大学院卒業後日本合成ゴム(現JSR)株式会社で研究員として勤務した後、農業生物資源研究所で、シルク利用研究に従事、2013年より現職。専門はバイオマテリアル研究。研究から広がる未来卒業後の未来像カイコ(家蚕)(左)と繭(右)。カイコは、純度の高いシルクタンパク質を環境低負荷で効率良く生産するタンパク質製造工場ですシルクタンパク質(フィブロイン)100%から出来たスポンジ材料。現在、軟骨再生用や創傷保護治療用材料としての研究が進行中です応用生物科学科シルク利用の新分野開拓!再生医療などの医療分野への活用を目指して●研究室研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科地球温暖化や異常気象により農作物の安定生産が難しくなっています。農作物の栽培には水や肥料が必須ですが、水資源や肥料の原料となる鉱物資源の枯渇が問題になっています。植物は光合成で固定されるCO2量以上には成長できません。野外でさんさんと降り注ぐ太陽の光エネルギーが光合成を通して植物に固定される効率はわずか数%です。光合成の光エネルギー変換効率は決して高くはありません。当研究室では、光環境(光質や光量)に対する光合成の順化応答を解明し、環境制御による光エネルギー変換効率の優れた野菜栽培システムを開発しています。種苗、食品加工、製紙関係、製薬、食品流通関係、教員、公務員等に幅広く卒業生を輩出。志望動機をしっかりと自覚し、本当に働きたい企業を十分に納得して選択する事が大切です。そのために日頃から自分で考え行動する主体性を身に付けるように指導しています。野末雅之教授名古屋大学大学院農学研究科修了、信州大学理学部生物学科を経て、現在、信州大学繊維学部応用生物科学科、2011年より先進植物工場研究教育センター(SU-PLAF)センター長。専門分野は植物細胞生理学。先進植物工場研究教育センター(SU-PLAF)白色光LEDによるワサビ苗生産LED光源によるロメインレタス生産植物工場は天候や季節に関係なく野菜を周年・計画生産するシステムです。そのキーワードは「光合成」です。光合成反応の投入エネルギーは「光」、人工光型植物工場ではより高い光合成効率が求められ、そのためには最適な生育環境の制御が必須です。太陽光の下での農業生産は約1万年の歴史がありますが、人工光下での植物生産は今、正にスタートしたばかりです。究極の光エネルギー変換効率による持続可能な食料生産を目指しています。植物を科学し、高い光合成効率で安全・安心な野菜をつくる教員紹介51

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