H29_繊維学部_研究紹介
52/68

遺伝子の本体であるDNAの構造、発癌物質や活性酸素で傷ついたDNAとそれを修復する酵素について研究しています。DNA修復酵素の中でも特に二つの異なるDNAの傷に働く酵素について、タンパク質工学や構造生物学の観点から研究しています。修復酵素がDNAの損傷箇所をどのように見つけ出して、結合しているかを明らかにし、DNA損傷の修復メカニズム解明を目指しています。深海の熱水噴出孔に生息する超好熱微生物のDNA修復酵素や蛋白質分解酵素についても、工業的利用を目指して研究しています。未研究の超微小微生物や抗生物質産生菌も探索しています。遺伝子は場所と時期を選んで発現し、タンパク質が作られます。個々の細胞に含まれる遺伝情報を担うDNAは使い捨てではなく傷ついたら修復される唯一の生体高分子です。DNAや酵素の機能構造が明らかになれば、それを医療分野に応用したり、生体関連物質の工業的生産に有効利用したりすることが可能になります。身の回りの土壌にいる未培養・未解明の超微小微生物や極限環境(温泉、深海)に生きる生物、さらに私たち人間自身も一生物として未だ神秘のベールに包まれています。一緒に生物の神秘の世界を覗いてみましょう。公的研究機関(農業・食品産総研、鉱物資源機構、筑波産総研、科捜研)や企業(山崎パン、ポーラ化粧品、武州製薬,ホクト、アスザックフーズなど)、その他多くの食品関連企業、化粧品製造企業、コンタクトレンズ開発などの医療関連分野、科学学術書出版会社などで活躍しています。志田敏夫教授薬学専攻博士課程修了後、名大化学機器測定センター教務職員、JohnsHopkins大学(USA-MD)博士研究員を経て、1986年より繊維学部講師、助教授、2005年より大学院助教授、准教授を経て、2009年より現職。核酸科学、タンパク質工学,微生物学。酵素の基質認識機構に今まで考慮されてこなかった酵素・基質複合体形成以前のきわめて初期の酵素の基質認識メカニズムを解明左端:酵素はまだ傷ついたDNAを未発見中央:酵素表面に出ているアミノ酸がDNAの傷(穴)を見つけたところ右端:酵素が傷のあるDNAを直そうとしているところ(穴を見つけたアミノ酸はここでは働いていない。)左図:超好熱古細菌(124℃:生育限界温度)M.kandleriが生息している深海の熱水噴出孔右図:未同定超微小バクテリア(信大繊維農場)研究から広がる未来卒業後の未来像教員紹介応用生物科学科核酸と酵素の機能構造/生体分子間相互作用の解明(微生物のサバイバル戦略)教員紹介下坂研究室では、自然界に存在する多種多様な微生物の中から有用なものを探し、食糧・環境・エネルギーといった私たちが抱える問題の解決に役立てる研究を行っています。例えば、カニ・エビ殻由来のバイオマスであるキチン・キトサンを有効利用するために、強力な分解細菌を見つけて、その分解酵素について調べています。また、キノコの代謝物や酵素を有効利用するために、有用菌株の分子育種に取り組んでいます。小さな微生物のもつすばらしい機能に学び、バイオテクノロジーを用いて、その機能を大きく活かすことがねらいです。食品、酒類、薬品、化成品を扱う企業に就職する学生が多いです。微生物を実験材料にして、代謝、酵素、遺伝子などの多様な生命現象を学ぶことで、学生は生物を利用した産業に進み、研究や開発に携わることを希望しています。下坂誠教授1985年に信州大学繊維学部に助手として着任し、2004年より現職。専門は応用微生物学。大学の卒論研究から、細菌、酵母、カビ、キノコなど様々な微生物を扱ってきた。顕微鏡で観る微生物の世界は魅力いっぱいだが、最近は老眼で観察に苦戦中。実験に用いているさまざまな微生物の写真です。研究室の冷凍庫の中には1000種類以上の微生物が保存されています研究から広がる未来卒業後の未来像下坂研究室では、微生物を用いて有用な物質を作ったり、遺伝子工学技術を用いて有用菌株を分子育種するなどの応用研究を展開しています。小さな微生物には、まだ謎がいっぱい。実は、これまでに学名が付いた微生物は自然界に存在する微生物のわずか1%程度です。自然界は未知の微生物でいっぱいの宝の山です。すばらしい能力を秘めた未知の微生物との出会いが楽しみです。1.0 m 上田城の堀水から、新属新種の強力なキチン分解細菌を発見し、学名Chitiniphilus shinanonensisを付けました。微生物の遺伝子を電気泳動で調べる実験の様子です応用生物科学科小さな微生物のすばらしい能力を私たちの暮らしに大きく役立てたい50

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る