H29_繊維学部_研究紹介
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教員紹介西井研究室では、生命や生物現象に有機化学をメスとして切り込みます。例えば、抗ウィルス作用や血小板凝血抑制作用のある天然物(天然から単離された物質)を全合成しました。全合成とは、天然と全く同じものをフラスコの中で合成することです。また、新しい有機反応を開発することで、今までに合成困難とされていた物質の合成を可能にします。他に抗菌・殺菌剤やフェロモンなどの生理活性物質の合成を行っています。最近、魚類のフェロモンの分子構造と活性相関を解明する研究を開始しました。魚類の生物応答の謎の解明とともに、フェロモントラップによる特定外来種の駆除にも役立ちます。有機化学的手段を武器として自然に切り込んで、有機化合物に着目することは、分子レベルで現象を解明することにつながります。医薬の薬理活性、殺菌作用、フェロモンによる雌雄の応答、各種ホルモンによる生理現象などを分子レベルで解明すれば、その応用が未来を切り開きます。つまり、天然物にヒントを得た医薬の開発、不治の病の治療薬の開発、作物の病の治療、フェロモンを利用した有害生物の捕獲、フェロモンを利用する貴重な生物のコントロールなど夢が無限に広がることでしょう。主に製薬や化学メーカーへの就職が多い。有機化合物の単離手法や有機合成的手法は「ものをつくる」最強の力になります。これらを習得した卒業生は、社会の幅広い研究分野で活躍しています。西井良典准教授ピッツバーグ大学博士研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員を経て、2007年より現職。主な研究分野は、天然物有機化学、有機合成化学、有機反応。抗ウィルス、抗HIV作用や血小板凝血抑制作用を有するいくつかの天然物の全合成を達成しました研究から広がる未来卒業後の未来像OOOMeOMeOOOOOMeOMeOOMeOリンゴ斑点病に対する農業用殺菌剤の開発研究を行った魚類フェロモンの探索、分子構造の解明、構造活性相関の研究化学・材料学科応用分子化学コース有機化学を駆使して謎を解く。生物活性物質の探索!新反応と新薬開発!教員紹介野村研究室では、量子化学に基づいた分子計算を行う事で、実際に実験すること無く、物質の電子的、光学的性質を初めとする様々な性質を調べています。それにより、物質の性質の根源を見つけることができます。例えば、炭素-炭素の二重結合が交互に連なった共役分子において、共役系が長くなるほど吸収スペクトルは長波長側に移動しますが、その理由も明確に説明できます。現在は、主にフラーレンを初めとする炭素を中心とした物質を対象にして研究を行っています。以前は、分子計算の際には、自分でプログラムを組んで、それで計算することが多かったのですが、最近は市販の分子計算ソフトウェアも充実しており、専門家でなくても比較的手軽に計算できるようになりました。そのため、例えば、有機合成をテーマとする論文の中に、反応経路の予測を分子計算で行ったりするものもあります。このようなことがより進めば、効率的な反応を予め計算により調べておくことで、試薬や時間を浪費することなく実験ができるようになると期待されます。卒業後の進路は様々ですが、応用化学課程の他の研究室に比べ、システムエンジニアが多いような感じがします。また、最近では教員や公務員を目指す学生も多く、実際に合格してそちらに進んだ学生もいます。野村泰志准教授信州大学繊維学部助手を経て、平成17年から現職。量子化学に基づいた理論化学。最近は、フラーレン等の炭素材料の電子物性や、ある種の有機分子の蛍光やその消光過程についての研究を行っている。計算対象の1つである、カーボンナノチューブ。グラファイトのように6員環がならんでいるあるフラーレンにおける電子分布と関連する分子軌道の図。赤でも青でも大きな所に電子が豊富にある研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科応用分子化学コースドライラボ:実験を行わない化学コンピュータが道具46

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