H29_繊維学部_研究紹介
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教員紹介荒木研究室では大きく2つのテーマで研究を進めています。1つ目は「ポリロタキサン」と呼ばれるネックレス状の超分子を作り、様々な化学修飾を施して、ゲル・繊維・フィルムなどの機能性材料を作ろうとしています。2つ目は、木材や植物から取れる「セルロース」やカニ・エビの殻に含まれる「キチン」の微結晶粒子を使った実験です。これらの微結晶は天然由来でナノサイズ、さらに1本の弾性率や強度は鋼鉄よりも強く、さらに生分解性がある魅力的な材料で、フィルムや繊維の補強材料として応用を進めています。ポリロタキサンと、セルロース・キチンの微結晶。どちらも形や性質が興味深く、大学の学術的な研究対象としても興味深いのですが、将来様々なところで役に立つ可能性も秘めています。ポリロタキサンを混ぜた塗装は、傷がつきにくい携帯電話の塗装として既に実用化されています。また、セルロース微結晶を補強材料として使うための特許出願に向けた研究も進められています。当研究室で自分の興味深いテーマを追求しながら発見した新しい材料が、社会で広く使われるようになることでしょう。設立したばかりの研究室でまだ卒業生が少ないですが、化学メーカー・材料メーカーを中心に先輩方が就職しています。在学中の研究のみにとらわれるのではなく、理系の研究職として社会に出たときに、何を求められるかを身につけて修了してもらうよう指導しています。荒木潤准教授科学技術振興特任研究員、JST-CREST研究員、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社技術顧問、2007年信州大学国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。専門は超分子科学・多糖類科学。ポリロタキサンは幅1ナノメートルの“ナノサイズネックレス分子”フィルムに成型することもでき、携帯電話の外装にも使われた左は植物中のセルロースウィスカー。ナノサイズのファイバーは鋼鉄よりも強い弾性率を持つ。さらに偏光板の間で光る液晶にもなる研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コースネックレス状の「超分子」とナノウィスカー(ナノ繊維)補強材料教員紹介有機溶剤や水に加えるだけでゲル化や増粘化を惹き起こす、低分子化合物やポリマーの開発やその応用について研究しています。ゲル化剤や増粘剤として作用する化合物を構成する成分をもとに分類し、ゲルや増粘体を形成する原動力や機構を調べています。また、化粧品などへの応用を研究しています。具体的な研究テーマ;アミノ酸系オイルゲル化剤、2成分型オイルゲル化剤、環状ジペプチド誘導体のオイルゲル化剤、シクロヘキサン誘導体のオイルゲル化剤、重合官能基を有するオイルゲル化剤、ポリマー型ゲル化剤の開発、増粘剤の開発、ヒドロゲル化剤の開発、ゲル化剤・増粘剤の応用。ゲル化剤に関する研究は基礎研究として興味深いだけでなく、工業的応用(化粧品、ゲル電解質、コーティング材、表示素子、液晶ゲル、インクジェットインク、印刷用紙、皮膚外用組成物、ゾル・ゲル重合の鋳型など)でも大きな可能性を秘めています。WebofScienceで検索したゲル化剤に関する過去20年間の私たちの論文数は254です。また、平均被引用数は31.34、h-indexは51です。化学系会社、電気系会社、化粧品会社、公務員などに就職。私たちの研究室では日々、研究に没頭するため、自然に実力が身についていきます。卒業生の研究室で培ったその実力は、様々な分野の企業に好感をもって評価されています。図1ゲル化剤によるゲルの形成過程;ゲル化剤と溶媒(左)を混ぜ、加熱して溶かす(中)。それを冷やすとゲル化する(右)研究から広がる未来卒業後の未来像英謙二教授大阪大学卒業、同大学院修了、信州大学教務員、助手、助教授を経て、1999年より現職。2002年;繊維学会賞受賞2011年;高分子学会三菱化学賞受賞2013年;日本化学会学術賞受賞図2ポリシロキサン型ゲル化剤を使って試作した新しいアイシャドウ(S社提供)図3低分子ゲル化剤を利用してK社より商品化予定の口紅化学・材料学科機能高分子学コースゲル化剤や増粘剤を分子設計し開発、その応用も研究しています39

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