H29_繊維学部_研究紹介
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超高齢社会を迎えた我が国にとって、運動器系の疾患により発症するロコモティブシンドローム(運動器症候群)は、介護予防や健康保持等を阻害する大きな社会問題のひとつです。このような問題を解決するために、『生活動作支援技術』に関する教育・研究開発を行っています。具体的には、日常生活の中で違和感なく簡単に使用できるウェアラブルロボット・デバイスの実現を目指し、人の全身運動特性の解析・理解、人の動作意思と機械をシームレスに繋ぐ推定手法、人の動きに合わせて支援する同調制御といった、人を中心とした研究開発に取り組んでいます。何事にも「無ければ創る」をモットーとして、専門分野という枠組みにとらわれず、人や社会のために何をすべきか自ら考え行動することのできる課題解決型の未来開拓者を育てていきたいと考えております。塚原淳助教筑波大学大学院システム情報工学研究科を修了後、筑波大学サイバニクス研究コア研究員、ImPACTプログラム・マネージャー補佐を経て、2015年より現職。主な研究領域は、人支援技術、運動制御、ロボティクスモーションキャプチャにより計測した人の歩行データを解析し、関節角度・筋張力・関節にかかる力などを計算「着る」ように、気軽に身に着けられるロボティックウェアcurara®私たちが研究開発する生活動作支援技術が実現できれば、近年、医療・福祉分野において活発化している装着型ロボットの導入フェーズから、さらに日常生活レベルでの実用化へと展開することができます。これにより、要介護になるリスクを軽減し、高齢者等の日常生活動作(ADL: Activities of Daily Living)や生活の質(QOL: Quality of Life)の向上につながることが期待されます。User interfacepower switch and mode selector to adjust synchronization gainsPower unitswith built-in torque sensors and encoders in each jointController boxwith CPU board, servo amplifiers, and batteriesRobotic Wear “curara®”歩行・起立動作支援機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース『生活動作支援技術』の研究開発で、新しいライフスタイルを目指す教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース無限次元系を中心とした機構と動作制御からなる無限の可能性生物は身体の硬さの変化や振る舞いによって、外界に与える力や外界から受ける力を調整しています。動物の尻尾に着目してみると、線形状の部位が手の役割・体の支え・水中での移動・空中での体の姿勢の制御といった様々な用途として用いられており、用途によって尻尾の硬さの変化や動かし方を工夫しています。剛性を切り替え可能な線形状の機構は、尻尾と同様に様々な用途として利用できると考えられ、医療分野においては限られた領域内での複雑な姿勢、術者の操作性向上を実現する装置として注目されています。西川・岩本研究室では大変形柔軟梁に可変剛性機構を取り付けた線形状機構の開発を行い、その動作制御手法について研究を行っています。ロボティクス、メカトロニクスといった研究に必要な知識や技術はもちろんのこと、問題解決力、発表の仕方など卒業後優れた人材と認定される能力を獲得できるよう指導します。岩本憲泰助教九州大学大学院工学府を修了後、九州大学工学研究院学術研究員を経て、2017年より現職。ロボティクス、メカトロニクスを中心として柔軟体を含むシステムの機構と力学に取り組んでいます。車輪型ロボットに形状を瞬間的に保存可能な尻尾を搭載することで、発生する慣性力を利用した跳躍を行う動作制御手法移動ロボット本体に慣性力の伝達を目的とした柔軟尻尾大変形柔軟梁に形状を保存する可変剛性機構サイズW3cm×H2.65cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm無限次元を有する柔軟体は組み合わせた機構とその動作制御によって大きく振る舞いを変えるため、柔軟体を中心としたロボットの可能性は未知数と言えます。私たちの身近に線形状が採用されている道具は非常に多く、もしそれらの線形状が自律動作可能になったら?と想像するだけで誰も考えもしなかった未来が見えてきます。柔軟体を中心としたロボットの可能性が新しい医療の世界を切り開きます。29

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