H29_繊維学部_研究紹介
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教員紹介合成繊維の製造方法において、最も基礎となるプロセスが紡糸および延伸工程である。本研究室では、複合繊維用紡糸機を利用して、芯鞘型複合繊維、海島繊維などの様々な複合繊維を製造し、また紡糸線上および延伸過程中において複合繊維の繊維構造形成過程を究明して、繊維の使える分野を医療、交通などに広げることを目指して研究を進めている。これまでの研究によって、合成繊維の基本単位は直径数nmの“ミクロフィブリル”であることが知られている。したがって、複合繊維内部に存在する繊維の直径がこのサイズに近くなると、繊維構造形成過程に大きな変化が起き、結果として通常の繊維では得られない高性能な繊維が得られる可能性がある。このような研究は大きな産業応用が見通せる創造的な研究開発になると考えて研究を進めている。繊維構造形成過程を究明する研究によって構造が制御できれば、高性能タイヤ補強材や高強度フィルタ-用中空糸など産業用材料として繊維の使える分野をさらに広げられる。また、海島繊維を利用した研究では、世界で初めてのナノファイバーフィラメント繊維の生産可能性を確認しており、ナノファイバーの適用分野拡大を目指す。研究成果を実際の製品や知的財産権に結びつける。基礎的な部分をしっかり知りつつ、繊維関係の科目や研究の面白さを知らせて、繊維産業の応用面も考えられる人材を育成したい。繊維の一番小さい構造から理解すれば、どんな繊維産業の現場で働いても基本から応用までが理解できる人材となれるでしょう。金慶孝准教授韓国釜山大学繊維工学科卒業後、東京工業大学客員研究員、信州大学繊維学部のイノベーション連携センターの助教、韓国特許庁の特許審査官を経て2014年より現職。研究分野は繊維・フィルムなどの成形加工および微細構造の解析、その他の専門分野は国内・国際知的財産権。研究から広がる未来卒業後の未来像複合紡糸機の模式図spinblockhopperhopperheating guideheating guidegear pump extruderheating chamberTransestrificationin interfaceNozzle structurecoresheathsheathinterface一本の繊維の中に千本の島成分がある複合繊維の電子顕微鏡写真レーザー延伸中の繊維内部に多くのボイドが作られた多中空繊維の電子顕微鏡写真複合紡糸で作られる繊維の電子顕微鏡写真自動車用タイヤに使える高強度繊維ータイヤコードpolyestertire cordsteel tire cordbead wiretire cord先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース繊維構造形成過程の制御によるHigh Performance合成繊維の製造winder教員紹介繊維工学とテキスタイルサイエンスの面から「せんい」に取り組んでいます。繊維工学の面からは、繊維機械やシステムについて検討しています。テキスタイルサイエンスとしては、せんいに潜んでいる法則を見つけていきたいと思っています。人類は古代は石器・土器を、やがて金属や合成樹脂、ついには原子力燃料を製造するところまで来ています。しかし、その間ずっと使われてきたものとして「せんい」があります。なぜ衣服は「せんい」でなければならないのか?これは、大変不思議で、面白く、また挑戦し甲斐がある謎であると思います。昔は大小さまざまな印刷屋さんがあって、それはなくてはならないものでしたが、パーソナルコンピュータとプリンタは印刷の世界を全く変えてしまいました。印刷業は大きく変わりましたが、誰もが自宅で様々な印刷物を作り出せるほど、印刷の文化は大きく発展しています。業界の成長と文化の向上は等しくないのです。このことは「せんい」の世界にも起こる、あるいは起きなければならないのかもしれません。同じ力のエンジンを積んでいてもレーシングカーとブルドーザーでは得意な仕事は全く違います。どちらが優れているかとか考えるのは無意味です。みんなが互いに得意なところで力を合わせるのが必要と考えます。坂口明男助教長野県上田市生まれ。信州大学繊維学部卒。信州大学大学院繊維工学専攻中退。信州大学繊維学部教務員、同助手を経て現職。現在の専門は繊維工学。研究から広がる未来卒業後の未来像真綿から手作りされる紬糸にも法則があるウェブ中の繊維の形を測る先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース「せんい」ー日本における、このキーワードの未来を考える11

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