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創薬・診断技術開発部門画期的な薬や診断技術を努力して世に送り出す究と基礎研究の間をつなぎ、さらにそこで起きるセレンディピティ(何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること)を生み出せたらと期待を寄せています。ちなみに、桑原教授は循環器内科の専門医。循環器系疾患は、日本人の死因第2位を占め、高齢化社会になるにつれますます増加していくと予測されています。桑原教授は、遺伝子解析や疾患モデルマウスなどを用いて、循環器系の臓器・細胞が病気にかかった時にどのように機能変化していくのかのメカニズムの解明や、新たな治療標的の特定などに取り組んできました。その他、本部門には循環器のほか、消化器、内分泌、産婦人科の医学系研究者が参画し、子宮体癌に対する新規抗腫瘍薬の開発や、慢性肝疾患の病態解明などを進めています。「信州は、地理的にも先進的な情報の発信地として中心となり得るポテンシャルを持っていると感じます。地方から、そして長寿県でもある信州から医療の先進モデルを発信していくことに大きな意味があると思っています」と桑原教授。日常診療におけるニーズや、臨床の現場からの知見をもとにして、分野間、また部門間の連携を深め、さらに高度な病態解明・解析を進めていきたいとしています。創薬・診断技術開発部門は、その名の通り、有望な診断・治療標的の特定から診断薬・治療薬の開発といった、研究シーズの実用化・市場化が大きなミッションです。これまでに、生体内で起こる様々な疾患のメカニズムを解明し、実用化を目指してきた麻酔蘇生学、病理組織学、生理学の研究者達がそろいます。部門長である川真田樹人学術研究院(医学系)教授は、麻酔蘇生学の専門医。痛みとは何かを突き詰めてきた分野の専門家です。そして「痛み」は、患者の80%以上が訴える症状です。癌なども含め、高齢化に伴う疾患は、多くが完全な治癒が困難であり、痛みを取り除くことで「クオリティ・オブ・ライフ」を保つことも求められます。こうした背景から、副作用のない新規鎮痛薬の開発が進められてきましたが、痛みの伝導路やメカニズムは充分に解明されてはおらず、未だ痛覚のみを遮断する副作用のない薬は開発されていません。そうした中、川真田教授は、「無痛症」に着目。そのメカニズムをもとに、副作用のない新規麻酔薬・鎮痛薬の開発を行ってきました。「実は、『シナノカイン』という名前をすでに付けているんです。死ぬまでには世に出したいと思っています」と笑顔を見せる川真田教授。川真田教授は、手術室での活躍が主となる麻酔科医は、「疾患から遠い存在でもある」といいます。しかし、手術後に起こる心不全など、未だその誘発要因の解明が不十分な術後の疾患も存在します。だからこそ、「この研究センターで各分野の先生方の臨床での知見、新しい知識や技術を取り入れながら、新しい発見ができたら」と期待を寄せます。本部門ではさらに、山本陽一朗学術研究院(医学系)特任講師を中心に、近年発達が目覚ましいAIを活用した病気のメカニズム解明や、手術で切除した組織の中にどれくらい癌が広がっているのかを迅速に、また分かりやすく診断する技術開発にも取り組んでいます。また、医療技術の実用化、普及のプロセスは、いわば営業活動のようなもの。「少し泥臭い仕事でもある」といいます。これまで、実際に実用化にまで至った経験を持つ研究者の知見を横に広げ、あらゆる必要な努力を実行していきたいといいます。(写真はイメージです)(写真はイメージです)(写真はイメージです)(写真はイメージです)部門長 川真田樹人学術研究院(医学系)教授06病態解明・医療応用研究部門部門長学術研究院(医学系)教授桑原 宏一郎2000年京都大学大学院修了。2000年日本学術振興会特別研究員、2003年テキサス大学サウスウエスタン医学研究所分子生物学講座フェロー、2005年より京都大学大学院医学研究科講師などを経て2016年より現職。創薬・診断技術開発部門部門長学術研究院(医学系)教授川真田 樹人1986年京都府立医科大学卒業。1999年札幌医科大学医学部助手、2000年同講師、2007年より現職。2014年信州大学医学部附属病院副病院長。研究センター門長に聞く!喫緊の研究テーマ

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