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病気のメカニズムの解明、新しい治療法や創薬の研究には、疾患モデル動物(人の病気に類似した疾患を発現するように人為的に操作された実験動物)の存在が欠かせません。近年、ゲノム解析技術の発達により、疾患に関連する遺伝子の特定が急速に進みました。しかし、単一の遺伝子の異常を再現するだけでは、様々な因子が関与し発現する病態を正確に説明できているとは限りません。そのため、多遺伝子改変疾患モデル動物を迅速、かつ体系的に活用する体制づくりが求められています。そうした中、本部門の部門長でもある新藤隆行学術研究院(医学系)教授は、同時に複数の異なる遺伝子の改変や加工を可能にするオリジナルのゲノム編集技術を開発。それにより、従来では不可能とされていた高度な遺伝子修復、再改造、また効率的で迅速な疾患モデルの作成も可能となりました。本部門は、こうした基盤技術の研究を軸に、新たな疾患モデルの確立を進め、生活習慣病や難病に対する新たな診断・治療法の開発をミッションとして掲げています。また、本部門は、循環病態、眼科を専門とする研究者のほか、次世代医療研究センター唯一の理学系研究者が参画していることも特徴です。副部門長を務める金継業学術研究院(理学系)教授は、電気分析化学を専門とする研究者。これまで金教授は、超音波を利用した生体中の活性酸素を検出するセンサーの開発などを進めてきました。本格的に医療分野に参画するのは初めてとのこと。「様々な疾患の引き金ともなる活性酸素を検出する電子バイオセンサーや高感度デバイスなど、これまでの成果を新藤教授のゲノム編集技術と共に応用することで、新たな医学的ツールの開発を進めていけたら」と抱負を語ります。「長寿県信州で医療をするのですから、『長寿医学』をサイエンスとして取り上げることが信州大学の強みになっていくのではないかと思っています」と新藤教授。信州大学から新しい次世代医療の形を発信していきたいとしています。病態解明・医療応用研究部門は、臨床の現場に最も近い部門として位置付けられています。診療の段階で出てくるニーズを各部門の手法やツールで解析することで新たな診断・治療シーズを見つけていくことが、本部門の役割のひとつです。また、臨床のニーズを拾い上げるだけでなく、研究シーズを突き詰め、翻訳し、それを臨床の現場に落とし込んでいくことも求められます。「異なる階層での学際的コミュニケーションがこの研究センターで実現し、これまで共有できなかった疾患モデルが見えてきたらおもしろいなと思っています」と部門長の桑原宏一郎学術研究院(医学系)教授。臨床研次世代疾患モデル・基盤技術研究部門医学と理学のコラボで新しい医学的ツールを開発部門長 新藤隆行学術研究院(医学系)教授部門長 桑原宏一郎学術研究院(医学系)教授病態解明・医療応用研究部門日常診療のニーズから研究シーズを見つける05オリジナルのゲノム編集技術により次世代疾患モデルマウスを作成。写真(下)は、マウス受精卵への遺伝子導入の様子。老化や疾病の引き金の一つとして近年注目される活性酸素。しかし未だに確固たる定量法はなく、新規高感度活性酸素検出デバイスの開発が進められている。次世代疾患モデル・基盤技術研究部門部門長学術研究院(医学系)教授新藤 隆行1998年東京大学大学院修了。2002年東京大学大学院医学系研究科助教、2004年より現職。文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。次世代疾患モデル・基盤技術研究部門副部門長学術研究院(理学系)教授金 継業1993年名古屋大学大学院修了。1993年岐阜大学工学部助手、2001年同大機器分析センター助教授、2003年信州大学理学部助教授、2011年より現職。次世代医療 部門長・副部 部門のミッションと 信州大学次代クラスター研究センター特集 Vol.5

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