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04チャンスを作り出せることだといいます。「これまで、異なる分野の研究者同士が意見交換できる場はほとんどありませんでした。だからこそ、異分野で活躍する者同士の自由闊達な情報交換を行うコンソーシアムを形成することに大きな意味があります」と、沢村教授は期待を込めてそう話します。この研究センターが取り組む大きなテーマとして創薬研究が挙げられます。新しい薬をひとつ作り出せる確率は、100万分の1程度とされており、それには多額の費用がかかります。日本の場合、新薬を開発できるのは、ほとんど大手製薬メーカーに限られていますが、海外では社員数の圧倒的に少ないベンチャー企業が、画期的な新薬を生み出しているケースも少なくないといいます。「日本の大手製薬メーカーの多くは、癌なら癌と、領域を絞った上で創薬研究を進めることが多い。それもひとつのやり方です。しかし、研究の過程で、当初想定していた領域とは違う領域で役立つものが生まれることも少なくありません。例えば血圧の薬を研究していて薄毛に効く薬が開発された、なんておもしろい例もあります。異なる分野の視点を取り入れ、アプローチを変えたり、発想の転換を行えば、新しい何かが生まれる可能性は大いにある。それをすくい上げ、活かす環境があれば、可能性はさらに広がると考えています」と、沢村教授は話します。それぞれの専門領域で信念を持って研究を進めてきた研究者が集う「大学」という場だからこそ、おもしろいベンチャー的アプローチが可能だといいます。今後、すでにある医療シーズをロールモデルとして育成しながら、新たなプロジェクトを進め、いずれは企業との共同研究やこの研究センターからスピンアウトしたベンチャー事業の創設なども模索していきたいとしています。次世代医療が見据える「最高の未来」。その輝かしい未来に向け、確かな一歩が踏み出されました。日本人に欠けているといわれる共創意識を、研究者間、研究者-企業間で刺激し、その相互作用によって単独の研究では得られない着想、展開を促進し、非線形の効果を生み出します。「研究成果にレバレッジを効かせる」ことは、サッカーのアシストに似ている。より良いゴールが期待できる。(沢村)1992年筑波大学大学院修了。1991年日本学術振興会特別研究員、1992年京都大学医学部助手、2003年国立循環器病センター部長などを経て、2014年より現職。日本学術振興会賞、文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。次世代疾患モデル・基盤技術研究部門創薬・診断技術開発部門病態解明・医療応用研究部門・循環病態・眼科・理学系(化学)・循環器・消化器・内分泌・産婦人科・麻酔蘇生・病理組織学・生理学※次世代医療研究センターのロゴマークは、信州大学のロゴである「鳥」から生まれた「卵」をイメージ。3つの色は、3つの部門を示し、3部門が一体となって研究・開発を行うことで、今まさに卵が割れて、次世代の「鳥」が生まれようとしている姿を表しているそうです。次世代医療研究センター センター長学術研究院(医学系)教授沢村 達也

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