理学部研究紹介
32/40

28理学科理学科物質循環学コース物質循環学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像水路を使った堆積実験。川や海でみられる地形や堆積構造がどのようにできるのか、実験的に発達プロセスを解明する。フィールド調査。女鳥羽川にみられる地形の変化がどのように生じたのか、現地で調査しながら議論し、自然環境に対する理解を深める。卒業研究として、フィールドに出て問題を発見し、それに取り組んで研究論文としてまとめます。身につけた能力や地球科学の知識は、自然に富んだ日本列島で生活していく上で生かされます。環境コンサルタントや資源関係の仕事に就く学生がいる一方で、教員や学芸員などの教育研究・普及活動に向かう学生もいます。私たちは日本の厳しい自然に囲まれて、その自然とうまく付き合いながら生きてきました。しかし、近年ではその付き合い方を忘れがちになってきているようです。そのためにさまざまな自然災害や環境問題に直面しています。自然の成り立ちを広く深く理解していれば、私たちはそこからより良い地球との付き合い方を見つけられるはず。まずはすぐそばにあるフィールドから目を向けてみましょう。日本学術振興会特別研究員(DC)、信州大学理学部助手、講師を経て、2010年から現職。専門分野は堆積学。フィールド調査と水路実験を駆使して環境形成の謎に挑んでいる。村越 直美 准教授村越 研究室地球環境の成り立ちに欠かせない『物質循環』のなかで、環境の土台となっている「地形」の変化および「堆積物」の運搬・侵食・堆積プロセスや、それらと生物との相互作用について研究しています。これらの研究成果が地層に記録された環境変遷を解き明かす鍵となります。   地球環境はどのように作られ、どのように変化していくのだろうか?自然界には美しいものがたくさんあります。とくに堆積物が記録している縞模様。地層の縞々、流れや波の縞模様、生き物の消長が示すリズム、気候変動がもつリズムなど、堆積物が記録している縞模様を研究して環境形成の本質に迫ります。 地表環境の成り立ちを理解する。槍ヶ岳の山頂近くでも気象観測を行っている。山岳地域では気象観測がほとんど行われていないため、山岳地域の気候変動の実体がわからない。中央アルプス千畳敷で積雪調査を行っている。山に降る雪の量と、その中に含まれる化学物質を詳細に調べることにより自然環境の変化を明らかにする。地球は、大気・水・岩石からなる場で豊かな生命活動が営まれています。それらは、相互に影響を及ぼしながら過去・現在・未来へと続きます。その仕組みを考え、その理に基づいて活動できる地球人になることを願っています。雪の研究がしたくて北海道大学に入学。南極・北極も含めた世界中で山と雪の研究をしている。現在、南極観測審議委員会委員長。前日本水文科学会会長、元日本雪氷学会副会長など鈴木 啓助 教授気水圏(鈴木)研究室地球の自然環境は絶えず変動しており、我々の生活もその変動に影響されますが、古来から人間は環境の変化に柔軟に対応して生きてきました。恐竜時代を生き延びたほ乳類がいたし、我々の祖先は氷期も逞しく生きていたのです。地球表層で起こる現象のほとんどは太陽からの放射エネルギーが源です。地球の気候変動は、基本的には地球と太陽との関係で決まります。温暖化防止活動も大切ではありますが、そろそろ、我々が地球環境の変化に如何に適応するかに力を注ぐべきかもしれません。一緒に考えましょう。日本の山に大量に降る雪は水資源としてとても重要ですが、世界でも稀なこの大量の雪が降るのはチベット・ヒマラヤ山塊と日本海、そして日本の脊梁山脈のおかげなのです。とても大切な雪は今後どうなるのでしょうか。地球規模での気候変動で気温が上昇すると山にも雪が降らなくなるという議論がありますが、本当でしょうか。雲の中ではすべて氷粒子として成長し、地上の気温が高いと途中で融けて雨になるのですが、そのため冬の気温が高い北陸の海沿いなどでは、暖冬の時には雪ではなく雨で降り、寒冬の時には雪のまま降るので大雪になります。しかし、日本アルプスでは、冬の気温がプラスにまで上昇するような急激な気温上昇が起こるとは考えられません。また、地球規模で気温が上昇すれば蒸発量も多くなりますから当然ながら降水量も多くなります。これらのことを冷静に考えれば、今後も山には雪が降り続けると帰結されるのです。自然の理を論理的に考えてみましょう。山と海を繋ぐ水循環:   山に降る雪は今後どうなるの?

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る