2017環境報告書
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36修士論文修士論文総合理工学研究科 農学専攻 村田 紀子022-1環境教育環境への取り組み コリネ型細菌による 脂肪酸発酵再生可能原料であるバイオマスからのバイオ燃料の生産は、地球温暖化を回避して持続可能な社会を構築するためのバイオリファイナリー技術として、年々、重要性を増している。しかし、実用化への課題は多く、生産効率が悪いことも実用化への障害となっている。当研究室では、コリネ型細菌による脂肪酸生産技術の開発を試みている。これまでに、脂肪酸合成の調節遺伝子fasRを破壊すると、長鎖脂肪酸(C16~C18)が菌体外へ分泌生産されることを見出し、本菌種に長鎖脂肪酸生産菌としてのポテンシャルがあることを報告している。今回、新たにミコール酸合成遺伝子accD3の変異が脂肪酸増産に寄与することを見出した。ミコール酸とは、コリネ型細菌等が細胞表層に持つ分子量の大きな脂肪酸の総称で、総脂質の30~40%を占めるとの報告がある。ミコール酸合成能を完全に遮断すると生育が悪化するものの力価は向上し、野生型accD3の導入で元のレベルに低下したことから(図)、accD3変異は、正常な生育と脂肪酸増産を両立させる弱化変異と推察された。脂肪酸増産は、同変異でミコール酸合成能が制限され、その分の炭素が脂肪酸生産に回ったためと考察される。本変異を脂肪酸高生産菌に導入すると、グルコース1%の培養で長鎖脂肪酸の分泌量は260mg/Lから310 mg/Lに向上した。修士論文総合理工学研究科 繊維学専攻 応用生物科学分野 赤石 泰隆 ペリレンを付着させた シリカゲル粉体を光触媒とした 環境汚染物質の可視光分解太陽光を利用して水中の環境汚染物質を分解する手法を開発することを目的とし、ペリレンをシリカゲル上に担持させた新しい材料(Pe/SiO2)を調製し、これを光触媒として利用できないか検討した。この触媒を種々の汚染物質の水溶液に加え、可視光および太陽光を照射することにより、汚染物質が分解しないかを測定した。結果、アスコルビン酸を電子ドナーとして加えることにより、アゾ染料の一種であるメチルオレンジを効率よく分解することが分かった。また、Pe/SiO2粉末をカラムに詰め、そのカラムにメチルオレンジとアスコルビン酸を混ぜた溶液を通液し、そのカラムに可視光を照射することにより連続的にメチルオレンジを分解させることが可能であることを明らかにした。また、ミツバチが巣からいなくなるという現象 (蜂群崩壊症候群)の原因物質の一つに考えられている農薬のイミダクロプリドについても、Pe/SiO2を光触媒とし、アスコルビン酸共存下で可視光あるいは太陽光を照射することにより分解できることを明らかにした。さらに毒性・残留性が高く、国際的に使用・製造が規制されている有機汚染物質であるペンタクロロフェノールはアスコルビン酸を添加しなくてもPe/SiO2を加え、可視光を照射するだけで脱塩素化反応が起こることを明らかにした。このように本法は様々な汚染物質の分解が可能であると考えられ、自然エネルギーで水質を浄化する技術として応用が期待できる。Photodegradation of environmental pollutants using perylene adsorbed on silica gel as a visible-light photocatalyst. Applied Catalyst B 2017; 204: 456–464. Moriwaki H, Akaishi Y, Akamine M, Usami H.

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