総合人間科学系研究紹介
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25総合人間科学系総合人間科学系教職支援センター教職支援センター研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像授業では,人間の心の発達について扱ったり,カウンセリングの聴き方体験などを行い,人の心に注目することの大事さを伝えられるよう目指しています。将来は,自分や周りの人の心に目を向け,大事にできる人になってもらいたいです。人の目が気になる青年期は,健康な人にとっても自己愛の問題が生じやすい時期です。この自己愛の問題がどのように減少していくのか明らかにすることで,悩みを抱えた青年のサポートに役立てたいと思います。また最近は,赤ちゃんと親の愛情の絆が基盤である愛着に関心があります。安定した愛着は,生涯にわたる心の健康に重要です。この愛着の概念を多くの人に広めていきたいと思います。授業でのカウンセリングの聴き方体験広島大学教育学部卒業後,広島大学大学院教育学研究科にて博士課程前期,博士課程後期を修了。博士(心理学)。臨床心理士。2013年から信州大学に着任神谷 真由美 講師教職支援センター発達心理学や教育相談など心理学関連の授業を担当しています。研究では,青年期の自己愛と対人関係をテーマにしています。自己愛と聞くと,一般的には自分大好きなナルシストというイメージが浮かぶと思います。ですが,それとは一見正反対の自信がなく,周りの目を気にしすぎてしまう人も実は自己愛の問題を抱えていると言えます。日本では後者の過敏なタイプの人が多く,心の問題を抱えやすいことが示されています。このような青年が,対人関係にどのような特徴をもつのか,またどうしたら過敏さが減少していくのかを明らかにしたいと考えています。自己愛と対人関係の心理学:自分や周りの人の“心”に目を向けよう「ホリスティックな教育」の人間観…アートの領域美的なものとのつながりグローバルなつながりエコロジカルなつながりいのちの次元とのつながり人間ホールネス(全体性)への広がりホーリネス(聖性)への深まりホリスティックな視点から人間を捉えることで、合理性・効率性・自律などの、近代的な価値だけに縛られない教育が見えてきます。「教育」に関わるのは教職に就く人だけではありません。私の授業では、今後、日常生活の様々な場面で出会うであろう、教える・学ぶ・伝える・伝わる・影響を受ける…などなど、広い意味での「教育」について、考えを深める場を提供できればと思っています。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了、同博士課程単位取得退学後、博士号取得(教育学)。千葉大学、東京学芸大学での非常勤講師を経て、2013年信州大学に着任。河野 桃子 講師教職支援センター「教育」は誰もが経験してきたものであるため、自分のこれまでの教育経験に囚われてしまい、柔軟に考えることが難しいテーマです。教職関係の授業では、グループワークや発表など、他の受講生の意見を聞きながら自分の考えを作っていく機会もたくさん用意されています。そのなかで多様な見方を取り入れながら、固定観念を問い直し、自身の教育観・教師観をより豊かなものにしていってほしいです。私たちが普段、当然のこととして素通りしてしまっている「教育」の仕組みや成り立ちについて、教育哲学・教育思想史という領域の手法で明らかにすることを目指しています。具体的には、19世紀から20世紀にかけてドイツ・スイスを中心に活躍した思想家ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner 1861-1925)の教育思想とそこから生まれた実践を手がかりに、人間を、社会的・文化的な水平方向のつながりや、いのちの次元・アートの領域などとの垂直方向のつながりのなかで捉える「ホリスティックな(全体的な)教育」について考えています。「教育」という営みを、より広く多角的に捉え直すシュタイナー教育については、日本語で読める著作もたくさん出版されています。シュタイナー教育では、特に児童期、芸術的な要素が重視されています。(上は教員による黒板絵)国際心理学会議での発表愛着に関する訳本

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