工学部 研究紹介2018
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着色した廃液から着色成分除去を目的として行った膜分離実験の装置図と実験結果。膜ろ過により着色廃液からほぼ透明な液体を回収中空状高分子膜の断面写真。膜の厚さや大きさを変化させた中空糸膜が作製できる清野研究室研究から広がる未来卒業後の未来像清野研究室では、高分子材料の一つである高分子膜に関する研究を行っています。多様な高分子膜を作製し、それらを利用した様々な膜プロセスに取り組んでいます。例えば、有用な成分を含んだ混合液があったとすると、有用な成分だけを取り出すことができれば、その成分を再利用することができます。また、取りだした成分が、環境に悪影響を与える物質であれば、環境保全にもつながります。具体的には、有機溶媒を含む廃液からの有機溶媒のみの回収や排液中に含まれる有用成分の回収などの膜プロセスに関する研究を行っています。各種膜センサーの開発にも取り組んでいます。環境保全の重要性は言うまでもなく、資源の少ない日本においては、いかに資源を有効に活用するかが大きな課題です。膜分離プロセスは、これらの課題を解決できる手段の一つです。清野研究室で取り組んでいる様々な膜プロセスを複合的に組み合わせることにより、様々な物質を感知し、必要な物質を分離し、それを回収し、再利用システムの構築が可能となります。学部卒業生のうち、多くが修士課程に進学し、研究活動や勉学を継続しています。その後は、研究内容を生かして膜分離の事業を行う企業や高分子材料関係の企業に就職する学生が多数です。清野竜太郎准教授信州大学助手、助教授を経て、2007年より現職。専門は、高分子化学、高分子材料。特に、高分子膜の合成、高分子膜輸送現象の解析、高分子膜分離プロセス。必要なものだけをいかに分離するか“膜”の可能性を探る⽔環境・⼟⽊⼯学科研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード膜分離・⾼分⼦材料・⽔処理・有機溶媒、有価物質回収【先生の学問へのきっかけ】子供のころから、身のまわりにあるものや身のまわりで普通に起こる事象に不思議を感じたり興味を持ったりしていました。雪はなぜ白いのか、ガラスはなぜ透明なのか・・・。高校に入って様々な化学の実験を体験しました。中でも、単純な操作ながら、アルカリ金属を水に入れた際の激しい化学反応が最も印象に残っています。反応の一つが、最もありふれた物質の一つである水だったのもその一因でした。このような実験を体験したことが化学系へ進学しようとした最大の要因だったと思います。今も様々な現象に興味を持って研究を進めています。•膜分離技術を利用した有価物質の分離・回収プロセスの研究•膜を通した物質の透過現象の理論的解明•特定物質を感知する膜センサーの研究•濃度差や圧力差を利用した膜発電システムの研究•廃熱を利用した物質分離技術の研究•高分子材料の機能化・複合化に関する研究•膜分離技術によるリン回収技術の開発(農水省事業、民間企業との共同研究)•油分濃度膜センサーの開発(民間企業との共同研究)•微粒化イオン交換樹脂を利用した両性荷電膜の開発(民間企業との共同研究)•両性荷電膜・中性膜を通した物質透過(民間企業との共同研究)•改質シリコーン膜を利用した低圧膜ろ過による廃液からの有機溶媒回収装置の開発(科研費基盤研究C)•多孔質膜を利用した廃液中の溶媒回収(JSTシーズ発掘試験研究)•高純度有機溶媒回収技術の開発(県財団、民間企業との共同研究)•セルロースナノウィスカー複合膜の開発(県財団)日本膜学会理事、編集委員、AseanianMembraneSoc,OrganizingCommittee高分子学会高分子と水・分離に関する研究会運営委員日本海水学会電気透析および膜技術研究会幹事日本化学会東海支部常任幹事、代議員長野県飯山高校SSH運営指導委員会委員長JSTSSH全国発表会講評員77

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