工学部 研究紹介2018
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伊東研究室研究から広がる未来卒業後の未来像伊東研究室では、光電子機能をもつ有機半導体やナノシートと呼ばれる分子サイズの薄さの酸化膜を組合わせた新しい太陽電池や発光デバイス、センサなどの高性能化や動作のしくみを調べる研究をしています。これらの超薄膜材料はこれまでSiに代表される無機半導体のように特殊な真空装置で作ることも可能ですが、工夫次第で桁違いの安さと簡便さで製膜できる塗布法(=ウェットプロセス)なのに驚異的な性能と新機能を発現する可能性を秘めています。そのための新しい概念の材料やしくみの理解を通して次世代エレクトロニクスの可能性を探求しています。有機半導体やナノシートを用いたデバイスは室温から100℃程度の低温で製造可能です。高温プロセスを必要とするシリコンや無機化合物の半導体に比べて1/10以下の小さなエネルギーで製造できるので環境にやさしく薄いフィルムの上に作れば超軽くて柔軟で高性能な太陽電池や発光デバイスが実現可能となります。さらに、有機材料ならではの身体の動きや湿度などの環境や健康をセンシングできる超高性能センサの開発にもつながります。電子材料・デバイス(部品)は目立たないけど、日本・世界の電気電子産業の要です。自分で作った物がしっかりと動く。工夫とアイデアで何倍にも性能が向上する。電気電子工学分野の幅は極めて広く多様な業界への進路が考えられますが、そこまでの過程や達成感を通して、自力を付けた人であれば社会人として大きな飛躍が期待できます。伊東栄次教授東京工業大学、信州大学助手、信州大学准教授を経て2015年より現職。研究分野は酸化膜や有機ナノ機能材料とそのデバイス・システム応用。特に、塗って作れる太陽電池、有機EL、センサ等の省エネデバイスの開発と応用に関心がある。ナノ材料を駆使して⼿軽な技術で最先端の発光・光発電・センサなどを実現する!電⼦情報システム⼯学科研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード有機・ハイブリッド薄膜太陽電池・有機EL(発光ダイオード)・誘電体薄膜・ナノカーボン複合体・⾼性能センサ【先生の学問へのきっかけ】シリコンを基盤としたエレクトロニクスの限界が叫ばれ始めた1990年代、もっと身近でシリコンでは実現し得ない機能を持つ材料を使って何か作れないだろうか?ちょうどそんな時期に、材料科学と電気の研究者の間で注目され始めたのが有機半導体でした。それからの20年でナノ材料群の可能性は大きく広がり次世代の発光デバイスや太陽電池、さらには生体を模写した高性能センサの「肝あるいは心臓部」と呼ばれるほどに発展しました。そうは言っても、まだ新しい分野でアイデア次第で様々な可能性が潜んでいる新しい分野です。有機半導体デバイスは無機材料のものと比べて驚くほど簡単に作れて思いがけない優れた性能を発現可能。そんなことにはまって今に至っています。•「高分子/カーボンナノチューブ複合体の電子応用」(文部科学省「長野・上田地域知的クラスター創成事業」の一環として)•「カーボンナノチューブ・有機半導体複合体薄膜電子デバイス」(科学技術振興機構(JST)データ補完事業)•「高分子/カーボンナノチューブ複合体を用いた超高性能電界電子放出源の開発」(科学技術振興機構(JST)シーズ発掘試験)•「プリンテッドエレクトロニクスに向けたナノ機能材料の高分解能パターン印刷積層化技術の開発とデバイスの試作」(科学技術振興機構(JST)A-STEP探索タイプ)•「カーボンナノチューブ/ナノメタル複合体配線の実用化にむけた要素技術開発」(科学技術振興機構(JST)A-STEP探索タイプ)•「低温形成N型酸化チタン層を用いたフレキシブル有機太陽電池」中部電力基礎技術研究所研究助成•「湿度センサの開発」企業との共同研究•「インバータ回路部品の評価高度化に関する基礎研究」企業との共同研究•「高起電力有機薄膜太陽電池のための新奇ナノ材料開発と構造制御」(科研費基盤B)•「ナノカーボン電極を有する超高速ハイブリッド薄膜ガスセンシングデバイスの開発」(科研費挑戦的萌芽)など応用物理学会機関紙編集委員応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会、北陸信越支部庶務幹事、代議員電気学会調査専門委員電子情報通信学会有機エレクトロニクス研究専門委員会など•薄膜太陽電池(特に低温・塗布プロセスを用いた高効率太陽電池)•有機発光ダイオード(OLED)•有機半導体及び複合材料を用いた機能材料・デバイス開発•有機絶縁材料の薄膜電気物性•極薄酸化物誘電体を用いた大容量キャパシタ、新奇電子機能応用•ナノカーボン及び金属ナノ粒子の複合体とその次世代電極材料開発•高性能センサ(湿度・水蒸気、ヘルスケア関連など)とその計測システムの開発39

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