工学部 研究紹介2018
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浦上研究室研究から広がる未来卒業後の未来像現代の情報化社会を支える集積回路(IC)は、構成する素子(LSI)の小型化などにより高性能化が進められてきました。しかし数nmという原子レベルに到達している小型化に対して、根本的な改善策が必要です。最近では、これまで用いられてきたシリコンに代わる材料が投入されています。次世代技術として更なる高性能材料に加えて、光、スピンや金属-絶縁体相転移など従来技術に代わる新原理電子素子を実現する材料などの研究の重要性が増しています。本研究室では、構成元素の選択によりそれらを実現しながら極薄膜で機能する層状物質に着目しています。層状物質は黒鉛の1層分であるグラフェンの流行から注目されている材料の1つです。しかし現状では結晶の高品質化が重要課題の1つとして挙げられ、解決が難しいです。また、まだまだ実現されていな新材料もあり、様々な可能性が眠っています。本研究室では、結晶の高品質化と新材料の提案を世界に発信し続けます。層状材料は極薄膜(1nm程度)でも機能する材料であるため、低コスト化が期待されます。本研究室では、半導体に留まらず材料に関して総合的に知る必要があります。また精密素子を作るための機器を自らが動作させ維持管理を行います。そのため、電機メーカーを筆頭に、材料、装置メーカーなど幅広く活躍することが期待されます。浦上法之助教博士(工学)豊橋技術科学大学2015年より現職。研究分野半導体工学、結晶成長、機能性材料新しい機能性原⼦層薄膜材料の探索と素⼦応⽤層状物質に関する研究電⼦情報システム⼯学科研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード層状物質・炭素化合物・遷移⾦属ダイカルコゲナイド・原⼦層薄膜【先生の学問へのきっかけ】中学生の頃に電化製品に興味を持ち、電機メーカーに就職してものづくりをやりたいと思うようになりました。軽い気持ちで工業高等専門学校に進みましたが、19歳の頃に実験で光る半導体に出会いその後は夢中になりました。原理や理屈が難しいのですがそれが興味に変わり更に深く知ってみたいと考え大学へ編入し、運よく半導体材料や素子の研究をしている研究室に配属されました。その後勉強内容は難しく大変な経験も多かったですが、興味は薄れず疑問は尽きず将来はこの分野で飯を食っていきたいと思いました。本研究室では、主に新しい層状物質の研究を進めている。この研究では、高移動度を示す電子材料と強電子相関材料やスピントロニクス材料の、層状物質に重要な厚さと品質を制御する技術を構築している。これらの技術を用いて以下のような基礎研究や新しい電子素子を研究する。•グラファイト系化合物材料の形成および基礎物性探索(ホウ素、炭素および窒素で構成される化合物半導体の実現)•高キャリア移動度を有する遷移金属ダイカルコゲナイドの大面積形成と次世代電子素子応用(二硫化ハフニウムおよび二硫化レニウム)•Mott絶縁体の作製および電子素子応用(二セレン化ニオブ)•室温でトポロジカルな性質を示す超薄膜の検討(ゲルマネンなど)•スピンを利用した熱電発電を実現する新材料の基礎検討(スピンゼーベック効果)主な研究設備等(学内共同利用設備を含む)化学気相堆積(CVD)装置、分子線エピタキシー(MBE)装置、蒸着装置(EB、スパッタリング)、高温管状炉、Raman分光装置、紫外可視赤外分光光度計、X線回折装置、X線光電子分光装置、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡C面サファイア基板上のレニウム蒸着膜の硫化により形成した二硫化レニウム(ReS2).X線回折によりc軸配向した単結晶であることがわかっている.特定面内方向の電子移動度が最大5000cm2/Vsと理論計算で予測されている。この他に本研究室では、散乱に制限された移動度が1800cm2/Vsと予測されているHfS2や、Mott絶縁体であるNbSe2などを作製している。独自構築した炭素化合物用CVD装置炭素系化合物半導体であるのグラファイト状窒化炭素の構造.c面サファイア基板上の二硫化モリブデン(MoS2).研究者情報(UrakamiNoriyuki)https://www.researchgate.net/profile/Noriyuki_Urakami応用物理学会北陸信越支部地区幹事作製したMoS2の試料の断面透過電子顕微鏡像.各層が積層している様子がみられる.37

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