工学部 研究紹介2018
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何度も同じ反応を検討し、反応条件を最適化していく。オイルバスを使い、反応の温度を一定に保っている物質化学科⼾⽥研究室研究から広がる未来卒業後の未来像戸田研究室では、新しい分子の設計・開発を行っています。医薬品・農薬などの原料となる低分子から材料化学に利用される高分子まで、身の回りには有機化合物がありふれています。分子レベルでのものづくりにおいて、有機合成化学はその根幹を成す極めて重要な研究領域です。現代の有機合成化学はものづくりのツールにまで成熟しましたが、この分野のさらなる発展には「常に新しい分子をつくり、その性質を理解する」ことが不可欠です。未知である分子のふるまいを理解する方法として触媒反応に着目し、新規触媒反応系の開発に取り組んでいます。科学技術の発展に伴い、有機合成化学を駆使したものづくりにもさらなる進歩が求められています。通常の化学反応では、必要なものだけではなく、不要なものもしばしば得られてしまいます。触媒は化学反応を自在に制御し、欲しいものだけを選択的に得る方法を与えてくれます。このような選択的反応の開発研究は、有機合成化学者に課せられた使命であり、未来の有機合成化学において学術界のみならず、関連産業にも大きく寄与するものと考えています。有機合成化学はものづくりの技術を習得するため、幅広い分野で活躍することができます。研究活動を通し、化学系の企業はもちろん、様々な分野において必要な基本的な能力を伸ばすことができると考えています。戸田泰徳助教東北大学理学部卒、同大学院理学研究科化学専攻博士前期課程修了、同博士後期課程修了。米国ヴァンダービルト大学博士研究員を経て2015年4月より現職。専門は有機合成化学、新規触媒反応の開発。新しい分⼦をつくり、触媒反応を通してその性質を理解する分析装置(高速液体クロマトグラフィー)を用いて、反応の選択性を調べている研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード分⼦変換・反応開発・選択的反応・触媒反応・触媒設計・有機触媒【先生の学問へのきっかけ】高校生の頃から漠然と化学は好きでしたが、とりわけ有機化学に興味があったわけではありません。有機化学を始めたのは、学部3年生の後期に東北大・寺田眞浩先生の主宰される反応有機化学研究室に配属となってからです。研究室で最先端の研究に初めて触れ、先輩方がひたむきに研究している姿に強く感銘を受けたのを覚えています。それから有機化学を通したものづくりの世界に魅了され、自分なりに分子を設計し、何か新しい反応を開発できればと思うようになりました。現在は、研究の面白さと難しさを伝えていきたいと考えています。•ホスホニウムイリドの合成、構造、反応•ホスホニウムイリドの触媒能探索•ホスホニウム塩の合成、構造、反応•ホスホニウム塩の触媒能探索•二酸化炭素固定化反応の開発•水素結合ドナー・ホスホニウム塩複合型有機分子触媒の設計開発(科研費(若手研究B))•ホスホニウムベタインを用いたデザイン型マルチ機能触媒の設計(科研費(研究活動スタート支援))•「遷移金属/有機分子」二成分触媒系の開発による高度分子変換(科研費(特別研究員推奨費))大津会議アワードフェロー有機合成化学協会研究企画賞(日本触媒)RecentPublications:ACSCatal.2016,9,6906;J.Am.Chem.Soc.2016,138,11038;J.Org.Chem.2015,80,6687;J.Am.Chem.Soc.2014,136,14734;Chem.Sci.2014,5,3515;J.Am.Chem.Soc.2014,136,7044;Angew.Chem.Int.Ed.2014,53,235;Chem.Eur.J.2013,19,13658;Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,2093.・想定される反応機構触媒の協同効果(ブレンステッド酸によるエポキシドの求電⼦的活性化と臭化物イオンによる求核攻撃)によりエポキシドの開環反応を促進ブロモフェノール誘導体からから1ステップで合成可能テトラアリールホスホニウム塩(TAPS)触媒を用いた常圧下での二酸化炭素固定化を利用した環状カーボネート合成:有用化合物の効率的合成プロセスの開発・触媒設計・量⼦化学計算による遷移状態構造・触媒設計27

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