工学部 研究紹介2018
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サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm金属系の多層膜において強磁性/非磁性金属界面での磁気抵抗効果を測定するために試作した微細素子。本技術をベースに接合界面におけるイオン伝導現象を解析していく。現在試作を検討している全固体薄膜のリチウムイオン2次電池の模式的な断面構造。研究支援部門共同研究講座⽥中研究室研究から広がる未来当研究室では、異種の無機材料が接合する界面や、乱れた欠陥のある無機材料結晶におけるイオン伝導現象を解析し、エネルギーデバイス等に応用できる革新的材料のデザインを目指して研究・開発を行っております。イオン伝導は、通常格子欠陥が存在する系で起こる現象であり、この意味で結晶の乱れが非常に重要な役割を担います。また、エネルギーデバイスにおいては異種材料の接合が不可避であり、界面での伝導の良否がデバイス全体の特性を左右します。当研究室では、手嶋勝弥研究室と協力して、乱れた結晶や接合界面のイオンの輸送現象の研究開発を進めています。これから訪れるスマート社会においては、安全・安心で、高い蓄積エネルギー密度を有し、急速充電が可能な使い勝手の良いエネルギーデバイスが不可欠です。そのためには、現在広く使われているリチウムイオン2次電池等の革新的な性能向上が求められます。特に安全性に優れる全固体イオン電池を実現するためには、結晶中そして界面におけるイオン伝導現象をできるだけ正確に捉え、その知見に基づいた材料や界面の設計、改良、組み合わせの選択などがキーとなります。この研究の先には、再生エネルギーなどを自由に使いこなす持続可能なスマート社会が広がっています。田中厚志教授1981年東京大学物理工学科にて修士課程終了後,科学技術庁を経て富士通研究所(85年). 2002年東北大学で博士(工学). 2013年より現職. 研究分野はナノ構造材料およびその物性評価解析. 乱れた結晶や接合界⾯におけるイオン伝導現象を解析し、⾰新的エネルギー材料をデザインする【先生の学問へのきっかけ】この材料は、なぜこのような性質を示すのだろう、何故?ナゼ?という疑問を繰り返すうちに、材料科学のもつ魅力に取りつかれました。応用的な工学と基礎的な固体物理学をつなぐのが材料科学です。企業にいるときは、磁場中での電子の伝わり方が変化することを応用して、高感度で磁場をセンシングするための磁性材料開発と実用化に夢中になりました。皆さんお馴染みのハードディスクの中にそうしたセンサーが使われています。今は、電子伝導に代わってイオン伝導現象の世界を巡っています。しっかりとした形がある材料の中を、電子よりはるかに大きなイオンがそれなりの速度で動くってことは、とても不思議ですね。今は、この世界を存分に理解し、新しい応用を生み出したいと思っています。研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード•層状、針状などの低次元材料のキャラクタリゼーション•酸化物材料や金属の超薄膜のキャラクタリゼーション•高電界や交流電場における線形・非線形伝導現象の解析•トップダウンおよびボトムアップによるナノ構造デバイス形成のプロセス技術•交流インピーダンス測定などによるイオン伝導現象の解析•材料およびナノ構造デバイスの応用研究•稠密結晶層電極/固体電解質界面における非線形輸送現象の評価解析に関する研究(科研費)•センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」(文部科学省/JSTのCOI拠点プロジェクトに副機構長(機構戦略支援統括)として参加)•超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(経済産業省・NEDOプロジェクト富士通・日立・東北大学の共同研究プロジェクト富士通の研究責任者として参画)•分離トラック型ナノ粒子磁気記録媒体の実用化開発(富士通・早稲田大学の共同研究プロジェクト富士通の研究責任者として参画)日本磁気学会ナノマグネティックス専門研究会代表世話人編集委員、論文委員、理事IEEEINTERMAG2005,プログラム委員経済産業省産業技術分科会タスクフォースWG委員500 nmイオン伝導・低次元物質・ホッピング伝導・インター化レーション・ヘテロ界⾯・リチウムイオン電池リチウムイオン電池の正極材量LiCoO2結晶(層状の薄い結晶)の面直方向の伝導測定用試料層状物質(2次元的な材料)の研究の歴史は長く、魅力的な特性に富み、今も新鮮です(L. F. MattheissPhy. Rev. B 1973)133

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