繊維学部研究紹介2016|信州大学
58/68

野川研究室アグロバクテリウムは自分の持っている遺伝子を植物に輸送して、染色体に組込む細菌です。つまり遺伝子工学をするすごい細菌です。海外では除草剤耐性ダイズなどの遺伝子組換え作物が栽培されています。これらの遺伝子組換え作物はこの細菌の力を利用して作出されています。野川研究室では、このアグロバクテリウムを使って、いろいろな作物で遺伝子導入法を開発したり、アグロバクテリウムを植物に感染させて有用物質を作る研究、アグロバクテリウムを遺伝子工学的に改良してもっとすごい力を持つ細菌にする研究を行っています。遺伝子組換えはアグロバクテリウムの例を見て分かるように、自然界でも行われている現象です。これを応用する事で、現在海外で栽培されている農薬を必要としない作物だけではなく、工業原料や医薬品の原料も植物で作ることができるようになります。今は石油から作られている工業原料が遺伝子組換え植物を使うと、太陽エネルギーとCO から作られるようになるでしょう。野川研究室では、やはり生物関係なので食品会社への就職は多いですが、コンピュータ関係、化学関係などいろいろな会社に卒業生が就職しています。また、植物防疫など公務員として活躍している卒業生もいます。野川優洋准教授長岡技術科学大学助手、信州大学繊維学部助手を経て、2009年より現職。主な研究分野は、植物や微生物の遺伝子工学や応用微生物学。カブにアグロバクテリウムを接種するアグロバクテリウムからの遺伝子で青い色がついたカブ遺伝子組換えでサイトカイニンの発現量を増やし、頂芽優勢の状態から枝分かれを促進された形態に変化したクワ研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科遺伝子工学する細菌アグロバクテリウムを利用する堀江研究室堀江研究室では、植物が高塩濃度環境(塩ストレス)から身を守るための仕組みを、分子生物学、分子遺伝学、生理学的実験手法を取り入れながら紐解く研究を行っています。塩ストレスは、世界農業において農産物の収量を著しく減少させている頭の痛い問題です。気候変動に伴う土壌の塩類化が、世界の農地で近年激しく進んでいます。世界人口が増加を続ける傍ら、日本では耳慣れない“塩害”により、近未来の食糧生産が脅かされています。塩害地での農産物収量増産を可能とするために、イネを中心に耐塩性穀類を作出するための技術開発を目指しています。幸いにも私たちの暮らしは、年々より快適になって、食べ物に苦労する事もありません。しかし、一方で化石燃料の大量消費を基盤とした発展のツケが、今我々人間社会に重くのしかかってきています。植物基礎科学から得られた知識をうまく利用する技術があれば、近未来に危惧されている、食糧・エネルギー問題を回避するための、重要な一要素となるのではないかと考えています。これまで植物に関連する種苗会社や製紙会社、あるいは浄水器関連の会社、食品会社や教員と幅広い分野に学生が巣立っています。気候変動を実体験している世代として、自ずと環境問題への意識を持って会社や進路を選択する傾向も少なからずあるようです。堀江智明准教授カルフォルニア大学サンディエゴ校研究員、岡山大学資源植物科学研究所特別契約職員助教等を経て、2010年より現職。研究分野は、植物分子生理学、および植物分子・遺伝育種学。研究から広がる未来卒業後の未来像三大穀類の一つであるイネやモデル植物シロイヌナズナを材料にして、植物の耐塩性の分子メカニズムの解明を目指しています。植物の耐塩性に不可欠であるNa+輸送体に焦点をあて、その輸送活性や生理機能を追求し、将来的には輸送体分子の機能を改変する事で耐塩性植物作出に繋げたいと考えています。応用生物科学科将来の食糧生産の一助となる耐塩性作物を作ろう!56

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です