繊維学部研究紹介2016|信州大学
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エビガラスズメ緑色幼虫。エビガラスズメは日本の至る所に生存する大型のチョウ目昆虫。サツマイモの害虫でもある白井研究室普段目にする「むし」の何気ない現象にも未知の機構がいっぱい。白井研究室では、そんな昆虫の持つ優れた能力を研究することで、将来、私たち自身の生活に役立てようと考えています。例えば、アオムシの色。アオムシは昔から緑色と決まっていますが、ではどうやって緑色になっているのでしょうか?研究を続けると、私たちヒトの様々な疾患の原因ともなる、タンパク質の分泌制御機構が関わっていることが分かってきました。近い将来、昆虫から学んだ知見から人間の病気を治すヒントが得られるかも。タンパク質分泌の制御機構は、現在最も注目されている研究分野の一つです。ペプチドホルモンなどの分泌制御機構の破綻は、昆虫のみならず、我々ヒトにおいても極めて重大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。しかし、その分子機構の解明は意外なほど進んでおらず、未だに多くの謎を残しています。白井研究室ではアオムシの緑色の研究を通じて、哺乳類細胞の研究とは少し違った角度から、この現象にアプローチしています。将来、糖尿病などの疾患の克服に、昆虫の研究が役立つことを期待しています。卒業後の進路として、一番多いのは食品や薬品のメーカー。卒業生の多くが大学で学んだ知識を基礎に、日夜新しい商品開発に励んでいるそうです。また、公務員として、国や県などの研究機関に就職している卒業生が多いのも、この研究室の特徴です。白井孝治准教授農林水産省蚕糸・昆虫農業研究所COE特別研究員、信州大学助手等を経て、現職。専門は昆虫および昆虫細胞を用いた生理生化学および分子細胞生物学。幼虫の真皮細胞から抽出した色素結合タンパク質。このタンパク質にタンパク質分泌制御のヒントが!研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科昆虫の優れた能力と生存戦略を追究し、日々の生活に活かす!田口研究室植物の持つさまざまな機能について研究している田口研究室。例えば、植物は作った物質に糖をつけて細胞の中に貯め、必要なときに糖を外して使う機能があります。この機能を、薬などの物質の加工に応用できないかと考えています。水に溶けにくい物質に植物の酵素を使って糖をつけ、水に溶けやすくしたり安定性を高めたりすることが可能になるのです。その他、私たちの健康に役立つ植物成分がどのように作られているのかを調べています。植物の機能を科学的に追究することで、私たちの快適な毎日につながっていきます。植物は周囲とのコミュニケーションのためにさまざまな物質を作り出しますが、それが、人にとっては薬となったり、いい香りだったりと、体に良い効能がいろいろあります。現在研究室で研究を進めている、植物が身を守るため有害な物質を無毒化する機能は、逆に環境浄化などにも使うことができます。こういった植物が持つチカラを研究し解明することで、私たちの生活に応用できることがたくさんあるのです。人や環境に有益な研究は幅広くニーズがあり、主に食品関連への就職が多い田口研究室。その他にも分析関連の業務を行う会社や、薬品関連、農業関連への就職も少なくありません。高校の先生として活躍している卒業生もいます。田口悟朗准教授信州大学繊維学部や信州大学遺伝子実験施設で助手を務めた後、2008年より現職。研究分野は、植物の有用物質生産に関わる酵素反応や遺伝子解析、その有効活用を図るといった応用生物化学。研究から広がる未来卒業後の未来像桑の葉には、血糖値を下げるのに有効な成分が含まれている。その成分ができる仕組みについて解析をすすめているサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cmサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cm抗酸化物質を含む身近なワサビの葉からDNAを抽出抽出した植物の遺伝子の塩基配列をパソコンで解析するサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm応用生物科学科知られざる植物のチカラ。暮らしを豊かにするその能力とは?55

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