繊維学部研究紹介2016|信州大学
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森脇研究室環境分析や毒性調査、環境浄化法の開発まで環境汚染に関わる幅広い分野を研究している森脇研究室。ポイ捨てゴミを分析したり、洞窟に環境浄化に役立つ微生物がいないか探検に行ったり、と様々な研究を展開しています。近年、力を入れているのが生物の作る材料を利用した環境浄化法の開発。廃棄物となる繭を油吸着剤として活用したり、バクテリアの作る高分子や羊毛のタンパク質成分を浄化剤に使ったりと新手法を次々と開発しています。こうした浄化法は環境に負荷を与えない安全な手法として、その発展と応用が期待されています。環境汚染による生態系や人類に対する影響は、世界的に見て、現在も深刻な状況にあり、その解決が非常に重要です。また、日本においても地震のため、重大な環境汚染が引き起こされました。環境汚染の実態を理解するとともにその浄化法を開発することは人類の未来のために不可欠であると考えます。現行の環境浄化手法にはまだ改善すべき点も多く、充分な対策がなされていない汚染地域も少なくありません。環境分析および浄化の研究を通じて、様々な環境問題に実際に役立つ成果を得たいと思っています。環境研究や対策の次世代のリーダーとなれる人材を育成すべく教育・研究を進めています。多くの学生が研究室での経験を生かして、公務員となったり、環境分析や検査を行う企業へ就職したりしています。卒業生は様々な場で環境マインドを持った社会人として活躍しています。森脇洋教授大阪市立環境科学研究所研究員、信州大学繊維学部准教授を経て、2015年より現職。研究分野は環境浄化法・環境分析法の開発や環境モニタリングといった環境化学ならびに分析化学。世界では安全な水にアクセスできず、感染症にかかる子供が多数います。水の浄化は非常に大きな研究テーマであると考えています大阪城の堀の泥を分析し、350年間の大気環境の歴史を再現しました。戦争の空襲が環境に最も悪影響を与えていたことが分かりました研究から広がる未来卒業後の未来像水質汚濁 世界的に重大な問題新しい浄化法生物資源の利用・安全かつ環境にフレンドリー・低コスト・廃棄物利用注)写真はイメージ図です。 安全な水を作る!・羊毛・くず繭・バイオポリマー水質汚濁 世界的に重大な問題新しい浄化法生物資源の利用・安全かつ環境にフレンドリー・低コスト・廃棄物利用注)写真はイメージ図です。 安全な水を作る!・羊毛・くず繭・バイオポリマー応用生物科学科生物の作る材料を利用した環境浄化法を開発する!塩見研究室カイコやその他の昆虫の持つセンサーやホルモンについて研究している塩見研究室。実は、昆虫は温度や日長をセンサータンパク質が受け取り、訪れる季節を予知しています。この高性能なセンサーの中には、天然成分の化学物質に反応するものがありました。この新発見を応用すれば、害虫や駆除すべき外来種に対し、自然にやさしい薬剤を散布することで、卵を冬に孵化させたり翅のない成虫を羽化させたりすることが可能です。自然や人に無害な害虫駆除として、注目を集めています。カイコの休眠時期のコントロールは、「昆虫工場」として、利用が進む遺伝子組み換えカイコの効率的な作出に貢献しています。このことを応用すれば、害虫駆除だけでなく生態系の保護にも役立ちます。ここ数年、ミツバチの個体数が全世界で減少し続けていますが、このような希少昆虫を卵の段階で保存し、将来の安定供給につなげることも可能なのです。また、昆虫の生態には未だに謎の部分も多く、それらを解明することで地球規模の環境問題や食糧問題、医療問題などに役立つ結果が得られると考えられています。食品会社や製薬会社、自然を相手にするような環境系企業等に就職する学生もいます。また研究室での経験を生かして、遺伝子解析などを行う企業にも卒業生を輩出。他にも、貿易関連の検査に携わるといった将来も考えられます。塩見邦博准教授信州大学繊維学部助手を経て、2007年より現職。研究分野はカイコや昆虫の休眠や変態、季節的多型といった蚕糸昆虫学、環境分子昆虫学、応用昆虫学。研究から広がる未来卒業後の未来像アカボシゴマダラの幼虫。こんな昆虫が塩見研究室には沢山いる。学生も昆虫の神秘に魅了された「虫好き」が集まってくるのだとかサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦7.8cmカイコのセンサー遺伝子を導入した培養細胞を観察するカイコのもつ有用な遺伝子のクローニング応用生物科学科高性能なセンサーを逆手にとる!カイコ・昆虫の生態解明と害虫駆除?54

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