繊維学部研究紹介2016|信州大学
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後藤研究室人々の暮らしに欠かせない材料のひとつ「繊維」。この繊維をもっと役立つモノにしていこうという研究に取り組んでいます。現在は、さまざまな異種素材との組み合わせによって、繊維を強くしたり(高性能化)、導電性や抗菌性を付与したり(高機能化)する研究に力を入れています。たとえば、ナノサイズのセルロースやカーボンナノチューブ、金属ナノ粒子などをうまく組み合わせることで繊維単独では発揮できない性質を与えてやることを目標に研究を押し進めています。たとえば、今あるものより2倍強い繊維ができたとします。その結果、信頼性も2倍大きくなりますので、安心・安全社会の構築に貢献できます。また、従来使用していた分と同じ強さが必要な場面では、強くなった分だけ繊維の使用量を半分にすることができます。これにより、使用する材料の量(ひいては廃棄時のゴミも)を半減できたり、飛行機や自動車のような移動体に利用される場合は、ボディーの軽量化により燃費が向上し省エネルギーにつながります。繊維の高性能化・高機能化は、人類の未来に貢献できる研究です。化学・材料会社に就職する者が多いです。繊維系会社はもちろんのこと、非繊維系会社でも繊維を取り扱う企業が多いので、他の大学ではなかなか学ぶことができない繊維に関する知識を修得したという強みを全面に押し出して活躍してくれることを願っています。後藤康夫准教授信州大学繊維学部助手を経て、2007年より現職。研究分野は繊維・高分子材料学で、現在は有機材料と無機材料を組み合わせた複合材料や、高分子固体の物性の研究に注力している。繊維の原料となる紡糸溶液調製のために、ポリマーを溶媒に溶解している様子サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm作製した繊維を加熱プレート上で延伸(引き延ばし)しているところ。この処理により、繊維強度は10倍以上大きくなる研究から広がる未来卒業後の未来像繊維の走行方向化学・材料学科機能高分子学コースより安全に、より快適に。わたし達の暮らしを支える高機能繊維を作る小山研究室小山研究室では、液体で供給したメタノールを気体として透過させる気化調整膜や、メタノールを透過させずに水素イオンを速やかに伝導する電解質膜などの機能性高分子膜の研究と、ナノファイバーの技術を応用したカーボンナノウェブ「CNW」の開発と応用に取り組んでいます。CNWは直径150nmという非常に細い炭素繊維の不織布で、物質拡散性を有するナノ集電層として大変有用な働きをします。これらを組み合わせることで、薄型・軽量でフレキシブルな小型燃料電池が実現可能です。ウェアラブル電源など様々な活用法が期待できます。小山研究室では、小型燃料電池の薄型・軽量化を可能にする材料の開発に取り組んでいます。燃料電池がウェアラブルになれば様々な利用形態が可能です。例えばロボットやパワースーツの電源です。曲面にフィットできるフレキシブル性を活かし、外装を兼ねた電源とすることも可能です。また、バッテリーのように充電のための時間を必要とせず、燃料を充填すればいつでもどこでも再起動できます。工事現場、山林での作業、介護用へと期待は広がります。卒業生の多くは大学院修士課程に進学しています。そして,主な就職先は、化学材料や有機電子材料、電子デバイス関連の企業です。真摯に研究に取り組む姿勢はきちんと評価され、そして将来の自分に力を与えてくれるでしょう。小山俊樹准教授信州大学繊維学部で助手・講師を務めた後、1998年より現職。生体での電子やイオンの働きをヒントに、機能高分子材料やデバイスの開発に係わる物理化学が研究分野。研究から広がる未来卒業後の未来像独自に開発した直径150nmの極細炭素繊維不織布「CNW」電極6セルを直列に一体成形した厚さ約4mmのフレキシブル燃料電池研究室で開発した材料を組み込んだ燃料電池は、その発電特性を評価装置でチェック。その結果を基に、さらなる改良を重ねます化学・材料学科機能高分子学コース薄くて軽いウェアラブルな燃料電池。ロボットやパワースーツの電源に!40

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