繊維学部研究紹介2016|信州大学
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荒木研究室荒木研究室では大きく2つのテーマで研究を進めています。1つ目は「ポリロタキサン」と呼ばれるネックレス状の超分子を作り、様々な化学修飾を施して、ゲル・繊維・フィルムなどの機能性材料を作ろうとしています。2つ目は、木材や植物から取れる「セルロース」やカニ・エビの殻に含まれる「キチン」の微結晶粒子を使った実験です。これらの微結晶は天然由来でナノサイズ、さらに1本の弾性率や強度は鋼鉄よりも強く、さらに生分解性がある魅力的な材料で、フィルムや繊維の補強材料として応用を進めています。ポリロタキサンと、セルロース・キチンの微結晶。どちらも形や性質が興味深く、大学の学術的な研究対象としても興味深いのですが、将来様々なところで役に立つ可能性も秘めています。ポリロタキサンを混ぜた塗装は、傷がつきにくい携帯電話の塗装として既に実用化されています。また、セルロース微結晶を補強材料として使うための特許出願に向けた研究も進められています。当研究室で自分の興味深いテーマを追求しながら発見した新しい材料が、社会で広く使われるようになることでしょう。設立したばかりの研究室でまだ卒業生が少ないですが、化学メーカー・材料メーカーを中心に先輩方が就職しています。在学中の研究のみにとらわれるのではなく、理系の研究職として社会に出たときに、何を求められるかを身につけて修了してもらうよう指導しています。荒木潤准教授科学技術振興特任研究員、JST-CREST研究員、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社技術顧問、2007年信州大学国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。専門は超分子科学・多糖類科学。ポリロタキサンは幅1ナノメートルの“ナノサイズネックレス分子”フィルムに成型することもでき、携帯電話の外装にも使われた左は植物中のセルロースウィスカー。ナノサイズのファイバーは鋼鉄よりも強い弾性率を持つ。さらに偏光板の間で光る液晶にもなる研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コースネックレス状の「超分子」とナノウィスカー(ナノ繊維)補強材料小駒研究室疾病の時に処方される薬は肝臓で分解されます。その肝臓において中心的な役割を果たしているのが、CYPと呼ばれる酵素です。薬の効き方は、人によって様々であり、副作用の強く出る人もいます。我々の研究室では、このCYPを電極に固定し、適切な薬の投与量を簡便に見極めることを目指したバイオセンサーの開発を行っています。また、珪藻という植物プランクトンはシラフィンというタンパク質を使ってシリカの殻を形成しています。このシラフィンの構造を模倣した高分子を用いることで、新素材としての様々な形状のシリカの作成に成功しています。生体を構成しているタンパク質などの生体分子は多種多様であり、様々な生理機能を発現しています。また、タンパク質だけでも数万種類あり、未解明の機能もたくさんあります。従って、どの生体分子を選び、どのように活用するのかは、無数の組み合わせが考えられます。このように生体物質を工学に応用することで、新しい概念のもとで、新素材などの開発が可能になると確信しています。化学素材、医療機器メーカーなどが就職先として比較的多いですが、学生が興味を持ったどの分野の企業にも対応できるような教育を心がけています。小駒喜郎准教授信州大学大学院繊維学研究科修了後、東北大学にて博士(理学)の学位を取得。1999年から現職。この間、2001-2002年ドイツケルン大学に留学。専門は生体高分子工学。研究から広がる未来卒業後の未来像-1.00E-07-5.00E-080.00E+005.00E-081.00E-07-0.7-0.5-0.3-0.10.1Current(A)Potential(V)基質なしリドカインテストステロンニフェジピン薬物の種類によって異なる電流電圧応答を見せたCYP固定化電極(バイオセンサーへの活用例)ポリマーの添加による様々な形態のシリカの生成(新素材への活用例)基質なしリドカインテストステロンニフェジピン化学・材料学科機能高分子学コース生体物質を工学に応用するバイオセンサーや新素材を目指して39

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