繊維学部研究紹介2016|信州大学
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大川研究室大川研究室では、水中に生活する生物がつくる繊維の生物科学・生化学研究を進めています。研究対象は主に軟体動物門と節足動物門の生物です。海に棲む二枚貝は、「足糸」と呼ばれる繊維をつくります。足糸繊維は、ジュール・ベルヌ作の冒険小説「海底2万里」にも登場し、カイコも羊も綿花もない海中で手に入る足糸繊維をつかい、潜水艦ノーチラス号の乗組員は衣類をつくったと描かれています。18-19世紀南欧州の貴族達は、足糸繊維の希少な衣類や工芸品を所有し、互いの品を自慢しあったそうです。足糸繊維はタンパク質でできています。タンパク質はアミノ酸が連結した鎖のような分子です。水中で足糸繊維をつくるために最適なアミノ酸の並び順があるはずで、生物進化の途中では、より強い繊維をつくるために、とてつもなく永い時間を経て、アミノ酸配列が次第に改良されながら、今に至っていると考えられます。水中で優れた繊維をつくるために生物が獲得してきた「知恵」は、最新の分析化学を駆使して明らかにされようとしています。「生物がつくった繊維材料」から、研究者が学べることは大変に多いのです。そして、未来の繊維材料工学につながります。研究室の卒業生たちは、現在、紡績、繊維製造、不織布製造、食品原料製造、スポーツ用品、プラスチック加工、天然多糖の加工製造販売、化成品製造などのメーカーの開発・研究部門の技術者として活躍しています。大川浩作教授信州大学繊維学部機能高分子学科卒業後、同大学大学院工学系研究科博士前期課程入学、修了後、東京大学大学院理学系研究科博士課程に進学、1998年博士(理学)取得.1996年信州大学繊維学部助手に着任、2014年より現職。1969年生。ミドリイガイ(Pernaviridis)が水中でつくる不思議な足糸繊維足糸繊維は、先端の接着円盤(左、くっつく部分)、遠位糸状部(中央、硬く強い繊維)、近位糸状部(右、コシの強い繊維)からできています研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コース生物化学研究のフロンティアが拓く未来とは?太田研究室現在、液晶はパソコンや薄型液晶テレビに使われており、私達の身近にあります。この液晶は分子の形が棒状で「棒状液晶」と呼ばれています。しかし、液晶にはこの他にも分子の形が円盤状の「ディスコティック液晶」と呼ばれているものもあります。このディスコティック液晶は、現在実用的応用はほとんどされていませんが、棒状液晶とは全く異なる分野(太陽電池等)に応用が期待され、研究が急速に活発になってきている未来材料です。太田研究室ではこの「ディスコティック液晶」を用いて有機太陽電池に適した新規材料の研究を行っています。現在用いられている太陽電池にはシリコンが使われていますが、硬くて重いという欠点があります。しかし、有機薄膜太陽電池を用いれば柔軟で軽くすることができます。さらにディスコティック液晶を用いることで、コストを大幅に削減することができ、大量生産することができます。将来的にはより太陽電池が身近な存在になると考えられます。太田研究室では研究に必要な「合成」と「物性」の二本柱を両方学ぶことができます。そのため学部や大学院を卒業した後は、「合成」の知識を活かして素材メーカーや化学メーカーに就職したり、「物性」の知識を活かして電機メーカーに就職したりして活躍しています。太田和親教授東芝総合研究所化学材料研究所研究員や信州大学繊維学部助手、同大学助教授を経て、2007年より現職。研究分野は液晶の物理化学、分子集合化学、錯体化学。ディスコティック液晶を顕微鏡で観察したもの。物質によって模様も変わってくるので、どんな模様が出るかも研究の楽しみの一つ自分で合成したディスコティック液晶を顕微鏡を使って観察。一体どんな模様が出るのでしょうか?研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科機能高分子学コース液晶を見てみよう!37

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