繊維学部研究紹介2016|信州大学
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宇佐美研究室宇佐美研究室では、光触媒を用いる酸化還元反応により、有害物質の分解除去、有機化合物の光酸化還元反応、さらに太陽光エネルギーを蓄積した有機物質を合成する光触媒反応システムを研究しています。光触媒が光子を吸収すると正孔と電子の対を生成し、そこに原料分子が接触するとそれぞれ酸化反応と還元反応を起こします。このため、光触媒のサイズを小さくして表面積を増やすと反応に有利ですが、光触媒粒子に光を届け、原料と生成物を運ぶためには流路のサイズと導光経路を工夫する必要があります。私たちが開発した多孔質ガラス反応器は、網目状の導光路と数百μmの流路を持ち、この内表面にnmサイズの光触媒を担持することで、表面積、導光路、原料と生成物の流路を最適に制御し、光触媒反応を促進します。研究室では、光化学や化学工学の知識を学びながら光触媒反応システムの開発研究に取り組むことにより、問題解決に必要な柔軟な思考力を高めることを目標としています。科学的に真摯に取り組む経験を積むことで、化学を主要な専門としながら、材料、電気、機械など広い分野で活躍できる力を身に着けることを目指します。研究から広がる未来卒業後の未来像ナノからミクロの階層構造を設計することにより、光触媒の本来の活性を発揮させることができます。また、化学工学的な考察により、実用化を考慮した光化学反応器の設計指針を示します。将来は、太陽光を利用して二酸化炭素から化学原料を合成する反応装置など、持続可能な社会に貢献することが期待されます。宇佐美久尚教授1992年名古屋大学修了(博士(工学))、信州大学助手、助教授、准教授を経て、2012年より現職。研究分野は光化学、光触媒、光化学反応装置。化学・材料学科ファイバー材料工学コースナノとミクロの階層構造で光触媒反応を制御する原水浄化水ガラス製円筒容器多孔質ガラスの内壁に光触媒を担持紫外線ランプレタスの水耕栽培LED光源多孔質ガラスを導光路とする光触媒反応器の模式図。内壁に担持した光触媒で有害物質を分解する。流通式光触媒反応器。植物工場の養水浄化への応用を実験中。多孔質ガラス反応器の断面。細孔径はガラス球のサイズにより約50~700 μmに制御できる。反応器の内部まで均一に励起光が導光される。厚さ3 nm、巾約50 nmの薄片状酸化チタン光触媒。温度、圧力、pH等の条件によりナノサイズの構造を制御。木村研究室生物は進化過程で優れた性能を持つ構造体を獲得しています。様々な反応を触媒する酵素や二酸化炭素を使った光合成などです。様々な機器の発達により、これらの生物構造体の詳細な構造が解明され、ナノメートルスケールで複雑な構造を持つことがわかっています。そこで、人工的にこれらの構造を模倣し、生体内での高効率なエネルギー変換および物質変換機能の構築について研究を行っています。具体的には、環境中で有害な物質の分解、微量な物質を検出できる化学センサ、シリコンを使わない太陽電池などの研究を行っています。化学を武器とし、電機や機械などの多分野との接点を持つ多面的な人材となることを期待しています。これまでに、化学・材料系メーカーを中心に、電機・機械メーカーにも卒業生を排出しています。木村睦教授平成2年筑波大学第二学群農林学類卒業、平成4年筑波大学大学院(環境科学専攻)修士課程卒業、平成7年信州大学大学院(工学系研究科)博士課程修了専門:機能材料化学ナノ構造材料を使うことにより、非常に低い濃度のガスを感知することができるようになります(人工嗅覚センサの開発)研究から広がる未来卒業後の未来像私たちの研究室では、生物構造を観察し、有機および無機化学的合成手法を使った新しい機能性材料の創成について挑戦しています。ナノスケールの大きさを持つ環境浄化触媒、微量な化学物質を感知することができる高感度センサ、カラフルな太陽電池を実現する機能性材料について研究を進めています。様々な元素を自由自在に操り、生物内に存在するナノ構造に近い構造を創り、さらに得られる材料の機能を詳細に解析しています。これらの材料は、これからの持続成長可能な社会構築のためのキー材料となります。化学・材料学科ファイバー材料工学コースナノテクで拓く機能性材料。生物構造の模倣による新しい機能発現30

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