繊維学部研究紹介2016|信州大学
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高橋研究室ものづくりを行ううえで、材料は欠かせません。これまでの材料の主役は金属材料やセラミックス材料など固いものが主流でした、これらに変わって、今後は高分子などのやわらかい材料がますます重要性を増していくことでしょう。高分子材料は,炭素を主成分として、これに窒素や水素などが結合してできる鎖状の長い分子であり、分子の形態がさまざまに変化することから、様々な性質を示します。また、生体に対して無害であることから、工業製品はもちろんのこと、生医学材料としても大きな可能性を持った材料であるということができます。高分子材料には、プラスチックのごみ問題という暗いイメージが付きまとってきたのも事実です。そこで現在は、多糖類など生物から取れる高分子材料の研究が盛んに行われています。このような研究により、将来は、環境にやさしい高分子材料が数多く生まれてくることが期待されています。また、一種類の高分子だけでは、十分な性質が発揮できない場合、複数の高分子材料を混ぜて(ブレンドして)新たな材料を開発するポリマーブレンド材料の研究も盛んに行われています。高橋研究室でもこのような研究を行って将来の高分子材料の発展に寄与したいと考えています。卒業生の多くは、化学系の企業に就職し、活躍しています。化学系の企業のほとんどは高分子にかかわっており、高分子を研究した学生に対する企業のニーズは高いといえます。こうした企業の場合、学部卒よりも大学院卒を採用する傾向があり、卒業後は大学院へ進学するのが望ましいようです。高橋正人准教授1986年工学博士取得、その後東京都立大学(現在の首都大学東京)を経て、1991年より現職。研究分野は高分子材料の構造制御(天然物多糖類の構造形成とその制御、ポリマーブレンドの構造制御、両親媒性高分子の構造形成とその制御など)。研究から広がる未来卒業後の未来像カラギナンゲル(左)とカルシウムアルギン酸ゲル(右)。これらはいずれも多糖類であり、生体に対して無害である。ゲルは創傷被覆剤などとして生医学方面に利用できる可能性があるCaAlg gelCagtype1ポリマーブレンドの海-島構造(左)と共連続構造(右)、構造を制御することで様々な物性を持った材料を実現できる可能性がある先進繊維・感性工学科感性工学コース21世紀はやわらかい材料の時代ですー高分子材料の未来の可能性を追求ー田中研究室現在、限りある資源である石油から作られる合成高分子は、人間生活に欠かせない物質となっていますが、焼却や廃棄による環境汚染など多くの問題を抱えています。そこで、地球環境と人間社会の共存・共栄のために、再生可能で生物由来の有機物資源から得られる環境循環型高分子の開発が進められています。田中研究室では、再生可能資源である糖や植物油などを原料とした『バイオマスプラスチック』、環境中の微生物の作用により分解される『生分解性プラスチック』を用いて、『人間』と『環境』に対して無害で安全に使用できる材料開発に取り組んでいます。田中研究室では、人間の体内でも分解するような物質やバイオマスから作製した様々な材料を使って、生体(人間)に対して適合性を持つ医療用材料(縫合材料、細胞を増殖させるシート、創傷保護材)、健康・介護用品(化粧品用パックシート、フィルター)などの開発を目指しています。さらに海水を淡水に変えるシート、乾燥地用緑化シートなどの開発から、資源やゴミ問題などの環境問題の解決に役立つ材料開発を目指しています。卒業生の進路は多岐に渡っており、材料開発を行っている素材・製造メーカーだけでなく、繊維メーカーを中心に様々な業種に就職しています。社会的に関心が高い研究分野であることから様々な業界へ進む可能性が広がっています。田中稔久准教授科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業や独立行政法人理化学研究所の博士研究員を経て、2007年より現職。研究分野は天然・水溶性・生分解性高分子などの材料物性・構造解析など。無数のミクロポアを有する生分解性高分子の高強度繊維を作製し、水溶性高分子を添加することで複合繊維材料を開発している乾燥地用緑化のために種子が発芽し成長するような水溶性高分子ゲルシートを作製し、その微細構造を電子顕微鏡を用いて解析する研究から広がる未来卒業後の未来像先進繊維・感性工学科感性工学コース『人間』と『環境』に無害で安全に使用可能な材料開発を目指して!16

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