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08ュニティと信州大学学術研究院(教育学系)教育学部 技術教育教授村松 浩幸ます。「世界ファブラボ会議」といった国際的な会議も毎年開催されており、国境を越えた連携やワークショップ、プロジェクトなどを進めるケースもあります。「一般的に、自分の欲しいものは探して購入する人がほとんどだと思います。でも、FabLabは、『自分の欲しいものは自分で創り、それを世界にオープンにしていこう』という発想なんです」と村松教授。「ものづくりが身近でない人にとって『買えばいい』から『作ればいい』という発想への転換は、とても新鮮なことなんじゃないかと思います」。立ち上げから関わってきた大学院教育学研究科修士2年の浅沼直樹さんは、こう笑顔で話してくれました。2017年4月から長野県の中学校技術科教員として勤務予定で、教員となった後も教材作りなどで関われたらと期待を寄せています。まだ試験運用中のFabLab Naganoですが、すでに多彩なワークショップが開催され、子どもから大人まで、多くの人が集まる空間となっています。例えば、「南米のイスを作ろう」という子ども向けのワークショップ。木製の椅子を組み立て、子どもが紙に描いたイラストをデジタル化してレーザーカッターで切り出し、それを背もたれの装飾にするというものです。実は、この椅子のデザインは、南米のFabLabがワークショップ用に作成し公開しているデータを利用。この時のワークショップでは、実際に南米のFabディレクターとテレビ電話をつないで、国際交流を行いながらものづくりを体験したそうです。その他にも、3Dプリンターを使ってペン立てやハンコといったものを作ったり、レーザー加工機でグラスに好きな文字を入れたりするワークショップなど、多彩なイベントが企画されています。日本ではじめて教育学部が運営するという特徴も持つ、FabLab Nagano。技術系やデザイン系だけでなく、音楽、社会、理科など、文系、理系にかかわらず、様々な分野が交流しやすい環境にあることも、FabLab Naganoのおもしろさにつながっていきそうです。教育学部4年の平岡駿さんは、FabLab Naganoの立ち上げから関わった学生のひとり。将来は教師となることを目指しています。「ものづくりっていろいろな知識を応用的に使う必要があります。ここができたことで、自分自身の学びの場にもなっているし、子ども達にものづくりの楽しさをもっと伝えたい、こんな力を付けさせてあげたいといった発想も生まれてきました」と話します。学生の学びにもつながっているようです。「教育学部にあるというメリットを最大限に活かして、次世代型教育のあり方を学んだり、教育研究などにも活用したり、そんな運用もしていきたいと思っています。いずれは、FabLabの概念を学校現場にも広げていきたい。何より、ものづくりを通した人と人のつながりが最大の財産。それがFabLab Nagano独自のスタイルにもなっていくのではないかと思っています」。そう村松教授が期待するように、一般的な市場流通や大量生産の原理ではできなかった新しいものづくりが、ここから生まれていきそうです。個人の自由なアイデアが世界に発信できる時代、長野の小さな工房から生まれる自由なものづくりは、未来の大きな夢にもつながっていくのかもしれません。子供たちや市民が参加する多彩なワークショップ大盛況次世代型の「学び」を育む場に出逢い附属次世代型学び研究開発センター長。専門は技術教育学(博士・学校教育学)。技術教育に関わる様々な教材を研究。運営している技術の教材サイト「ギジュツドットコム」(http://gijyutu.com)は有名。平成24年度TEPIA知的財産事業日本知財学会特別賞,平成27年度科学技術分野文部科学大臣表彰等受賞等。NHK高専ロボコンや全国中学生ロボコンの審査委員長,特許庁知財教育事業委員長等も歴任。運営を担う学生達。(左:浅沼直樹さん、右:平岡駿さん)左が小型の3Dプリンタ、右がレーザー加工機子ども向けのワークショップを開催した時の様子。初めて見る機械を使ったものづくりに、子ども達も目を輝かせた

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