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「視覚化」のすごさ!を結び付け、視覚化したことによって、初めて明らかとなった事実です。実際、日本はインドネシアやマレーシアから、食料や木材などを多く輸入しています。例えば、日本がコーヒー豆を多く輸入するインドネシアでは、国際的な需要に応えるため、森林を伐採して農地を広げています。木材を多く輸入しているマレーシアでは、熱帯雨林の伐採により、マレーグマなど希少な野生動物の生息・生育環境が奪われているといわれています。また、食料品だけでなくスマートフォンなどの工業製品にも、野生生物の減少につながるリスクが潜んでいるといいます。今回の研究成果は、今後、企業が環境負荷を抑えた商材の輸入先の選定を行う際のツールとして、また、効果的な生物保護区域を設定する有効なデータとして、さらには、消費者が環境負荷の少ない商品を選択するための基準として―など、様々な活用が期待されます。この「世界地図」の作成には、国際自然保護連合(IUCN)が公表している「レッドリスト」などが用いられました。金本講師は、そこから、生物多様性が脅かされている「ホットスポット(※3)」の世界分布図を作成。また、「世界経済モデル(※4)」に基づき、世界187カ国における1万5000以上の製品・サービスのサプライチェーンを追跡し、データベース化を行っています。さらに、日本やアメリカなどの国ごとに着目して、そのデータとホットスポットの世界分布図を統合しました。こうした作業を基礎にして、レッドリストに掲載されている生物種のうち、絶滅の恐れが高く、生息範囲が分かる約7000種に対して、どの国の生産・消費活動がどの程度影響を及ぼしているのかを推計し、数値化しました。そして、その7000種の数値データとその種の生息範囲を組み合わせ地図上で可視化し、分かりやすく着色することで、経済活動に起因する生物の絶滅リスクを明示する「世界地図」が完成しました。今後、この手法を他の環境問題にも応用していきたいという金本講師。「企業の方々との共同研究もできたらと考えています。いずれは、消費者向けに環境負荷が少ない製品として売り出す際のラベリング制度などにも、このマップが活用されれば」と期待を寄せていました。※3 生物多様性が豊かであるにもかかわらず絶滅危惧種が多く生息し、危機に瀕しており、急いで保全すべき地域のこと※4 世界経済全体の動きを解析し、方程式体として組み立て、予測、政策効果の分析などを行ったもの2014年、東北大学環境科学研究科博士後期課程修了、博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(2011年~2014年)、シドニー大学客員研究員(2009年~2011年)、九州大学「持続可能な社会のための決断科学センター」講師(2014年~2016年)を経て、2016年より現職。図1)日本の消費で引き起こされる絶滅危惧種への影響を示した地図。色が濃いほど影響が大きい信州大学 経法学部金本 圭一朗(学術研究院・社会科学系)講師14

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